財政出動は私たちを豊かにしない。理由は明らかで、飢餓に直面したタコが飢えを凌ぐために自分の手足を食べたとしても、生命は保てるかもしれないが、成長できるわけがないのと同じだ。
私たちやその子、孫の生活を豊かにするには、際限なく膨張を続ける財政や社会保障にタガをはめ、子や子孫のお金は子や孫に返さなければならないのはもちろんのこと、経済を今一度成長軌道に復帰させなければならない。(『教養としての財政問題』「おわりに」より)
『教養としての財政問題』が発刊されたのは2023年5月だが、2025年となった今も、状況は悪化するばかりである。今日本に何が必要なのか、考えてみたい。
*本記事は『教養としての財政問題』(島澤諭、ウェッジ)より抜粋、編集しました。
私たちやその子、孫の生活を豊かにするには、際限なく膨張を続ける財政や社会保障にタガをはめ、子や子孫のお金は子や孫に返さなければならないのはもちろんのこと、経済を今一度成長軌道に復帰させなければならない。(『教養としての財政問題』「おわりに」より)
『教養としての財政問題』が発刊されたのは2023年5月だが、2025年となった今も、状況は悪化するばかりである。今日本に何が必要なのか、考えてみたい。
*本記事は『教養としての財政問題』(島澤諭、ウェッジ)より抜粋、編集しました。
消費税減税は主に高齢世帯の得になる
総務省統計局「家計調査」を用いて、仮想例ではない現実の所得税や消費税、社会保険料の所得階層別・世代別の負担額の違いを見てみることとしたい。
上記の表から、年収が450万円までの世帯では消費税負担が所得税等負担を上回ることが分かる。450万円までの所得層で全体の46%を占めるので、確かに消費税減税を実行すれば多くの家計、しかも低所得層が助かるのは間違いない。消費税減税に説得力があるように見えるだろう。
次に、同じく、総務省統計局「家計調査」を用いて、今度は、世帯主の年齢別の所得税や消費税、社会保険料の負担額を見てみよう。
上記の表からは、まだ低い給与しかもらえていない30歳未満と、引退した65歳以上の世帯で消費税負担が所得税等負担を上回っていることが分かる。ちなみに、高齢世帯の年収は多くが300万円前後となっている。また、30歳以上64歳以下の世帯では所得税等負担が消費税負担を上回っているのが分かる。つまり、年齢別に見れば、消費税減税は主に高齢世帯の得になるのだ。
以上の点をあわせて考えれば、消費税減税で恩恵を受ける家計の多くは高齢世帯であることがわかる。逆に言えば、多くの高齢世帯では、所得税減税はほとんど恩恵に与ることはできない。だから、高齢世代の得にならない、つまり政治から見れば票にならない所得税減税は主張されないのだ。


