もちろん、実際には消費税を引き上げたところで、現在の赤字垂れ流し、債務山積みの財政状況に鑑みると、それでもやはり子や孫の負担は膨大にならざるを得ないのだが、逃げ切り世代に逃げ切りを許さずに、応分の負担を求めようと思えば、消費税が適切であり、だからこそ消費税が嫌われ、政争の具とされ続けることになる。
確かに、消費税を増税すれば景気は下向くだろう。しかし、それは所得税を増税しても、社会保険料を増税しても、法人税を増税しても同じことのはず。逆に、消費税を減税すれば景気は上向くだろう。しかし、それは所得税を減税しても、社会保険料を減税しても、法人税を減税しても同じことなのだ。
それにもかかわらず、なぜ消費税だけが嫌われるのか?
それは、所得税も社会保険料も法人税も多くの高齢者には関係のない話で、高齢者は自分は逃げ切れるため日本の将来に興味がないからに他ならない。高齢者の一番の関心事項は、自分の懐具合と自分の懐を痛める消費税なのだ。
これが世界でも深刻な世代間格差が一向に改善されないことからも導き出される解答だ。
社会保険料負担こそ深刻
このように、高齢世代に嫌われ、さらになぜか勤労世代にも勘違いから嫌われている消費税であるが、実は、家計の負担で最も重いと言えるのは、所得税でも消費税でもなく、社会保険料の負担なのだ。
先の表3‐2によれば、所得階層別で見れば、200万円未満と1500万円以上の所得階層を除いた所得階層で、社会保険料負担が所得税等負担も消費税負担も上回っていることが分かるし、表3‐3によれば、64歳以下の現役世帯のうち、54歳以下の世帯で社会保険料負担が所得税等負担も消費税負担も上回っていることが分かる。
つまり、本当に家計の負担を軽減したいと思えば、消費税減税ではなく、社会保険料負担の軽減(廃止)をこそ要求し主張すべきなのだ。しかし、そもそも、高齢世帯では社会保険料の負担は小さいので軽減されたところで得にはならない。
社会保険料は私たちの負担だけでも39兆円、企業負担も入れると74兆円もあるので、廃止や軽減するにしても規模が大きすぎて、21.6兆円に過ぎない消費税収を減税するのとは比べ物にならず、社会保障財政は即破綻することになるだろう。
社会保障財政が破綻することで一番困るのは生活費の多くを年金に頼り、医療や介護のサービスを受ける高齢者に他ならない。
高齢者の利益になることは提示しても不利益になることは絶対にやらない。これこそがシルバー民主主義に突き動かされた高齢者優遇政治の神髄だ。
