2025年12月6日(土)

#財政危機と闘います

2025年9月29日

消費税の「逆進性」は問題なし

 もう一つ、消費税が嫌われる理由として強調しておかなければならないのは、逆進性の問題であろう。

 今回のシミュレーションにおける簡単な数値例では、みな同じ所得すなわち同じ消費水準だと仮定していたが、実際にはそんなことはない。たくさん消費できるお金持ちもいれば、そうでない人もいる。

 つまり、消費税は、累進税率を適用できる賃金税と違って、年齢を問わず、所得の高低を問わず、一律の税率が適用されるので、年齢にかかわらず所得の低い方の負担は収入比で見て過重になってしまう。

 しかし、現実に戻って考えれば、消費税だけで公平性を実現する必要はさらさらなく、累進所得税や様々な社会保障給付を組み合わせることで消費税の逆進性を是正し、垂直的公平性を実現しているのだから、消費税だけを取り出してその逆進性を強調するのは無意味なのだ(注1)

 上記の表によれば、日本の場合、年収300万円台までは所得税や消費税、社会保険負担よりも給付の方が多く、400万円台ではほぼトントンとなっている。つまり、確かに消費税だけを取り出してみれば、所得の低い者ほど所得に占める消費税負担が重く、所得が上がるにつれて所得に占める消費税負担が軽くなる「逆進性」は存在するものの、所得税や社会保険負担、さらには社会保障給付を含めたトータルで見れば消費税の逆進性は解消されている。

 要するに、低所得世帯への配慮が適切になされれば、「働く人が減る社会の基幹税としては消費税が適している」のであり、労働人口減少社会においては、賃金税を基幹税とするよりも、消費税を基幹税とした方が、経済・社会の支え手である勤労世代の負担が軽減されるのだから、(基幹税が賃金税のときよりも)負担が増える引退世代が反対するのであれば、反対の理由もよく理解できるのだが、現実には負担が軽減されるはずの勤労世代までもが、口角泡を飛ばして消費税反対! を叫ぶのは、なんとも理解に苦しむのが正直なところだ。

(注1)もしそれでも消費税の一時点で見た逆進性が問題だとするならば、低所得者に対しては、給付付き税額控除を実施すればよい。つまり、低所得者の基礎的生活費に課税される消費税相当額を、所得税や住民税から控除・還付・給付することにより逆進性を解決するのだ。


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