望まれる「国民に寄り添う資源管理」
水産資源管理の場では、しばしば「漁業者に寄り添った」管理を求める声が漁業者団体、管理を行う行政官、そして政治家らから聞かれることがある。それは往々にして、漁業者団体の意見におもねり緩やかな管理を正当化するための言い訳として用いられてきた。
確かに漁獲枠を増やせば、短期的にはこれを漁獲する漁業者は潤う。しかし科学を無視した資源管理は、中長期的には資源のさらなる減少や崩壊をもたらしかねない。これは漁業者を含め、誰の得にもなりはしない。
スルメを含め海産資源は一部の漁業団体の短期的な利益のためのものではなく、将来世代を含め、我々全ての長期的な利益となるよう、持続可能な形で利用が図られるべきはないだろうか。利用可能な科学的知見はすでにあるし、不確実が高いようであれば、予防的アプローチを適用して控えめな枠を設定するのが資源管理の国際的スタンダードである(このことについては拙稿「日本の資源管理に足りない「予防的アプローチ」とは」を参照)。その意味からも、今回のスルメイカの事例は繰り返されるべきでない反面教師として記憶されるべきだろう。
