変容する林道の整備目標
22年における民有林林道の新設量は140キロメートルにまで落ち込み、このペースだと1万キロメートル伸ばすのに、70年もかかってしまう。図4の目標など到底達成できない。
それは林野庁も「路網開設延長は、森林作業道を中心に増加しているものの、幹線となる林道等の整備が遅れている状況」(令和7年6月11日第1回路網整備検討会資料)と認めている。さらに資材費・労務費の高騰等により林道等の開設延長は漸減とも述べていて、悲観的である。
図4では、トラック道である林道等(運材路)に、主として林業用の機械が走行する森林作業道(集材路)を加えた路網の整備としてお茶を濁している。明らかに目的も性能も違う別種の道を積み重ねて同列に論じる矛盾が林道整備の決定的遅れを際立たせている。
さらに問題は、既設の林道も長年の風雨にさらされて損傷して、トラックが通行できない状態にあり、実質的に機能していないと見込まれることである。
となればあとは、現存する林道を最大限に活用するしかない。
先述の路網整備検討会の資料を見ると林道だけではなく、図らずも林業自体の先行きの困難さがよく示されている。
もはや林道の延長は望めず、それに代わる森林作業道等は災害復旧事業の対象にもならず、基盤施設としての要件を満たしていない。それどころか、気候変動による山地災害の激甚化・頻発化によって森林や林道の被災が増加することに対して、人口減少による山村の消滅、森林技術者・林業従事者の減少によって、将来の森林・林業・山村の絵が描けない状態にあることが如実に見てとれる。
日本の森林・林業に興味のある方には是非この資料のご一読をお勧めしたい。

