2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年9月22日

 クマ類の衝撃的な事故が連続している。

北海道・札幌市の住宅街に現れたヒグマ。市街地ももはや彼らの活動地だ(THE ASAHI SHIMBUN)

 今年の上半期、岩手県では人家にまでツキノワグマが侵入し、高齢者に襲い掛かった。北海道では住宅街と登山道でヒグマに遭遇した人が、草むらにひきずり込まれた。3件とも被害者は亡くなった。8月までに5人の死者が出ており、大量出没被害があった23年の6人に早くも達してしまう恐れがある。死に至らなかったとしてもクマの襲撃による傷は、被害者の一生を変えてしまうほどの悲惨なケガにつながる。しかも大量出没年に起こる人身被害の多くは、9月から11月に発生するため、これから危険な状況が始まると言っても過言ではない。

 クマ類の被害は、出没してからできる対策が少ないため、出没予防が何より重要である。事前の対策を講じていくためにも、いったい今、何が起こっているのかを正しく把握しなければならない。

 クマ類を巡る情勢は、大きく捉えると2つの側面がある。1つ目の側面としては、増加傾向が続いているという点である。

 昨年12月号の本誌特集「令和のクマ騒動が人間に問うていること」の中で筆者は、クマ類は「増加のフェーズ」であることを指摘した。しかし、近年殺処分数が増加していることから、総数としては増えていないのではないか、と思われる方もいるかもしれない。

 環境省が各都道府県のツキノワグマの個体数推定値をまとめた図をみると、実際は、ツキノワグマは30年前の5、6倍にまで増加し、それに伴い、四国と、クマが絶滅したと思われる九州を除いた全ての地域で分布が拡大している。

 これほどの分布拡大には個体数の増加が背景にある。大量出没年の捕獲数は2000年代には3000頭ほどだったが、20年代に入ってから6000頭、23年には9000頭を超えてしまった。これだけ捕獲しているのに、なぜ出没は加速し、被害は減らないのか。


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