2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月14日

 この夏、トランプ大統領は、台湾への武器売却の停止、頼総統の米国への立ち寄り拒否、中国人留学生60万人受け入れ表明などを通じ、明らかに習近平総書記の関心を引こうとしたことが挙げられる。

 また、ウクライナ侵略で中央アジアなどに対するロシアの影響力が減退し、一方的関税措置により対米不信感が世界に広がりつつある中で、中国の影響力拡大の余地は大きくなっている。TikTok問題解決に目途をつけて、米中首脳会談を実現することは、まさに中国の影響力増大を内外に誇示する良い機会になると考えていると思われる。

日本でも周知が必要なTikTokのリスク

 TikTokの具体的リスクに関しては、論説において指摘されている具体例に加え、24 年11月に行われたルーマニアの大統領選挙がある。同選挙において、極右候補者の支援キャンペーンにTikTokのインフルエンサーを利用して、投票行動に大きな影響を及ぼしたと疑われ、選挙が無効となった。

 BBCは工作の背後にロシアが介在していたと報じている。TikTok はウクライナ戦争でも両国で活用され、特に音楽や歌などが、おすすめシステムによって誤情報の拡散や自国のプロパガダに使われている由である。

 日本のTikTokの月間利用者は、2024年11月時点で約3300万人である。日本は、米国、豪州、ニュージーランド、カナダ、欧州連合(EU)等と同様、公用スマートフォンでのTikTokの利用を禁止している。また、埼玉県、神戸市、大阪府などの地方自治体も公式アカウントに利用することを禁止している。

 他方、自民党がTikTokを利用した広報活動を行っている。いずれにせよ、日本政府は、TikTokのリスクを国民に周知すること、また、国会はそのリスクを減じる法整備が必要な時期に来ていると思われる。

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