今日でも、米国は、特別な武器を持った大国ではあるが、時代が生んだ他の大国をも考慮しなければならなくなった。新たな大国は、米国の「倫理的優位」を認めない。プーチンのウクライナでの行動には必ずしも賛成ではないが、米国の対ロシア制裁には同調しない。オバマは無気力なのではなく、ポスト西側世界での外交を行なっているのである、と論じています。
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上記は、ル・モンド紙のフラション記者が、米国の識者と意見交換したあとで書いた論説のようです。オバマ大統領に対する米国内及び国際的な失望感が広がっているということは既定事実として認めています。ただ、それに同調するわけでもなく、また、それを否定するわけでもなく、西側諸国の支配する国際関係が終わったというような雑感を述べた論説です。
ただ、アジアについては、アメリカがクリミア併合に際してウクライナを助けられなかったことについて、中国の脅威の下にあるアジア諸国が懸念を持っていることについて、ブルッキングスにおけるリバソール発言を引用して、米国の同盟国でないウクライナへの対応は、米国の同盟国である日本や韓国の場合には当てはまらないと言っています。
振り返って見れば、ここでも引用されているように、オバマ外交の最大の失敗はシリアでした。そもそもが、優柔不断、思いつきの判断でしたが、それが外交面では、サウジの安保理入り拒否のような激しい波紋を呼び起こしただけでなく、何よりも、手続き面で、副大統領、国務、国防両長官、特別補佐官の誰にも相談せずに、マクドノ-補佐官と散歩中に決めたという軽率さのために、ホワイトハウス、国務省、議会で、誰一人、大統領を弁護しなければならない立場の者が居ないという異常な状況を作ってしまいました。
オバマ政権としては、中間選挙を控えて、何とかこの失点を挽回しなければなりません。それが、ウクライナなのか、シリアなのか、イランなのか、パレスチナであるのか、あるいはTPPなのでしょうか。成功の可能性は小さいとしても、まだまだ、いわゆる選挙年のオクトーバー・サプライズ実現に向けての努力は続けられるのでしょう。
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