2024年12月13日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月17日

 4月30日付け仏ル・モンド紙で、Alain Frachon同紙記者は、オバマ米大統領がシリア問題などで見せている弱腰外交は、オバマ大統領の無気力から来るものというよりも、世界が変化したことの帰結かもしれない、と論じています。 

 すなわち、オバマ外交は、ウクライナ危機でプーチンに対抗できず、シリアの悲劇を止めることができず、イスラエル人とパレスチナ人を説得することもできず、欧州諸国が協調して行動するように指導することも出来ず、例を挙げれば切りがないほど、弱腰である。

 ここにある種の失望感がある。オバマ大統領の大演説は、素晴らしい言葉、力強い論理をもって、普遍的人道主義を感じさせるが、その外交活動は、複雑な現実を前に、色褪せて見える。

 ワシントンの新保守主義者達は、オバマ大統領は米国の地位を低下させたと非難する。NATOをウクライナやグルジアまで拡大することをせず、欧州にある米ミサイル防衛の一部を撤去し、シリアの反政府軍には充分な支援もせず、シリアのアサド大統領が化学兵器を使用しても武力攻撃をしなかったオバマ外交は、ロシアには弱さの証と捉えられた、と新保守主義者達は語る。

 元法学教授のオバマは、イラクやアフガニスタンでの武力行使の限界から、対立よりも外交を望む。一方、KGB出身のプーチンは、ソ連時代を懐かしがり、力関係しか信じず、クリミアには米国がフリー・ハンドを与えてくれると結論づけたのかもしれない。

 シリア以来、オバマ外交は、その「信頼性」の問題に悩まされている。シリアの化学兵器使用の際にオバマが見せた臆病さは、マイナスの連鎖を引き起こした。ロシアのウクライナでの冒険主義がそうである。そして、ロシアによるクリミア併合は、アジアにおける米国の友好諸国に波紋を呼んだ。アジアの同盟諸国は、中国の力の台頭を前に、米国との軍事同盟の信頼性に疑問を持ち始めた。それで、オバマは、1週間、日本からフィリピンまで、同盟諸国を安心させるために、アジアを歴訪しなければならなかったのだろう。

 中国はオバマの慎重さを弱さと捉えてはならない、と専門家達は言う。法的に、ウクライナは米国の同盟国ではないが、日本、韓国等は米国の同盟国であり、同盟国が攻撃されれば、米国は行動する義務がある。「この相違は、中国も、分かるだろう」と、クリントン元大統領の補佐官だったKenneth Lieberthal氏は語る。

 それでも、アメリカ外交に優柔不断の印象は残る。このことは、もはや、世界が、1989年のベルリンの壁崩壊直後の世界ではなくなったことを示す。


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