2025年12月15日(月)

唐鎌大輔の経済情勢を読む視点

2025年10月15日

 現状、高市総裁自身から経済政策について鮮明なイメージが語られているわけではない。だからこそ市場参加者は心地よいストーリー(拡張的な財政・金融政策の継続)を自己実現的に生成しようと動き続ける。

 そもそも従前の発言が発言であるため、「自己実現的に生成されたストーリー」もそれなりに説得力を持ってしまうというのが現状なのだろう。本人が明確に否定するまでこのムードは続きそうだが、そのためにはまず首班指名で首相になっておく必要がある。この点、公明党の連立解消によってより見えにくくなっており、どうしてもこの空白を突く動きは出やすい。

 ちなみに、10月9日にはテレビ東京の番組で「行き過ぎた円安を誘発するつもりはない」とはっきり否定しているのだが、円高への修正は見られていない。財政・金融政策についてもっと具体的な話を市場参加者は求めているのだろうか。同番組では「円安には良い面もある」とも述べているため、これに引っ掛かっているのかもしれない。

10月利上げに対する影響をどう読むか

 目先で注目される論点は「高市総裁誕生が10月利上げの可能性に与える影響をどう評価すべきか」である。結論から言えば、10月に利上げする可能性は逆に高まったように思える。

 元来、筆者は10月利上げについて五分五分と考える立場である。これは9月に執行が始まったばかりの自動車関税引き下げの影響を10月末に判断することは難しく、12月会合まで待てば企業決算や賞与などより多くの情報も得られるというメリットもあるため、急いで利上げに踏み切ることは無いとの考えからだった。米国経済の不透明感に警戒を寄せる植田和男日銀総裁の弁にも鑑みれば、「10月ではなく12月もしくは1月」という可能性は相応に高いと筆者は考えていた。

 しかし、問題は円安である。ドル/円相場は高市総裁誕生を受けて3営業日で+3%以上も上昇している。円安経由でインフレが輸入される現状について国民の不満は極めて大きい。

 ほとんどの国民は直面している物価高が円安に由来しているという事実を認識しているだろうし、円金利の上昇によって現状を打開できるかもしれないと考えている層も存在するだろう(筆者は必ずしもそう思わないが)。「円安を止めるための利上げ」であれば世論に沿った政策運営であり、政治的に反対する理由はないはずである。

 そもそも3年半前に始まった円安から日本のインフレは始まり、その間に2つの政権が倒れている。円安インフレを止めない限り、高市総裁の身も危ういことは分かっているのではないか。高市トレードが続くほど、10月利上げの可能性は高まるようにも思える。


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