この戦略は中国のAI をグローバル・スタンダードにするかもしれない。ここに華為技術(ファーウェイ)の6Gでの優位性が加わると、世界の大半のテクノロジー・インターフェースは米国製ではなく中国製になる可能性は十分ある。
中国のテクノロジー戦略をとりわけ恐るべきものにしているのは、領域をまたがっての統合だ。中国はただAIモデルを作っているのではなく、それらをハードウェア、インフラ、そして都市に組み込みつつある。中国企業は種々のセンサーを搭載した人型ロボットや四脚ロボットを製造し、これらのロボットに現実の環境の中で見たり考えさせたりしている。
昨年、中国は米国のほぼ9倍の産業用ロボットを設置した。ドローンや空飛ぶクルマについても、中国はこれらが飛べる空域を都市上空に設け、いわゆる「低空経済」を築きつつある。
深圳では既にドローンが荷物を配達、広州ではイーハンの自律飛行型のクルマが乗客を乗せ始めている。ここでも強みは統合で、センサー・AI・ハードウェア・法規が一体となって変革技術を創り出している。
他方、米国では基礎科学・技術向けの政府支出が大幅に削られ、政府がハーバード大学と喧嘩するなど、最良の大学が包囲されている。そして政府機関が一部閉鎖される中、大統領と国防長官が数百人の将軍を招集し、社会的不平等を問題とするWoke思想と戦うよう説教した。米国は気合を入れなおす必要がある。
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人型ロボットにも注力する中国
このザカリア論説は、国際社会に対する米国と中国の姿勢に大きな違いが出ていること、さらに技術面で中国がAIの分野を含め、将来、優位に立つ恐れがあることを指摘して、米国がもっと深刻にそのこと考えるべきであると警告したものである。この警告は的を射ている。
トランプ大統領は、先の国連総会演説で国連が果たしている役割に罵詈雑言を吐いて、多くの加盟国から呆れられたが、中国は国連創設80周年を祝い、国連強化を主張するなど、建設的な国際協調主義を強調し、責任感のある大国のふるまいをして見せた。
米国の高関税政策に対し、中国は世界貿易機関(WTO)での「発展途上国」としての特権は今後享受しないとし、かつ後発途上国と中所得国に対しゼロ関税にする方針を示した。
