ダラスで中間メンバー会議を開いたのは、データセンター事業で世界をリードする米国のIT業界を取り込むのが狙いで、AT&Tを会議に招くなど、その旗振り役を果たしたのが台湾のIT企業と日本の富士通およびその通信機器事業子会社である1Finity(ワンフィニティ)だった。
データセンターの国際標準化組織も連携へ
オープニングセッションには、データセンターやクラウドコンピューティングのハードウェアの標準化を担う「OCP(Open Compute Project)」という国際標準化組織でチーフ・イノベーション・オフィサーを務めるクリフ・グロスナー氏も登壇し、IOWNグローバルフォーラムとOCPとの協力関係の重要性を訴えた。
OCPはメタを中心として11年にスタートした標準化組織で、日本の産業技術総合研究所(産総研)に相当する台湾の「ITRI(工業技術研究院)」がIOWNグローバルフォーラムとの仲を取り持ったといわれる。今年8月に台湾で開かれたOCPの会議にIOWNグローバルフォーラムの幹部が講演者として招かれ、来年8月の会議にも再び出席する予定という。
ITRIなど台湾のIT業界が両者を近づけようとしたのは、IOWNグローバルフォーラムは次世代光通信技術の推進団体ではあるが、技術の標準化組織ではないため、IOWNの実装を目指すにはOCPのような標準化組織を巻き込んでおく必要があると考えたようだ。OCPのグロスナー氏は「生成AIの需要拡大に伴う電力需要の拡大に対応するにはIOWNグローバルフォーラムとOCPのメンバーが互いに協力していくことが重要だ」と指摘した。
OCPのメンバーにはメタのほか、グーグルやマイクロソフト、インテル、AMD、NVIDIA(エヌビディア)、シーゲイトといった米国の有力IT企業が名を連ねており、IOWNの認知度が米国のIT業界でも高まりつつあることを表している。
グロスナー氏によると、OCPには米IT企業以外にも英半導体技術会社のARMや韓国のサムスン電子など世界約500社・団体がメンバーとして参加しており、25年時点でのメンバー企業の世界総売上高は約1070億ドル(約17兆円)にも上るという。29年にはこれが1900億ドル(約29兆円)まで伸びる見通しだと語り、OCPとの強力関係の構築はIOWNグローバルフォーラムにとっても大きなチャンスになると指摘した。
富士通の米通信機器子会社がパイプ役に
IOWNグローバルフォーラムと米IT業界との仲を取り持ったもう1人の立役者が富士通の通信機器事業を今年7月に分離独立させた子会社の1Finityだ。富士通は84年にダラスに通信機器の製造子会社を設立するなど、AT&Tをはじめとする米国の通信会社とは古くから良好な関係を構築してきた。富士通にとってAT&Tは北米の通信機器市場における最も有力な顧客企業で、1Finityの北米売上高の約6割を同社が占めているという。
