ブラジル戦の先発メンバーでは、欠場の遠藤航に代わりゲームキャプテンを担った南野拓実をはじめ、谷口彰悟、鎌田大地、堂安、久保、上田の6人、後半に投入された伊東、田中碧、相馬勇紀、町野修斗も”カタール組”だ。一方で、GK鈴木彩艶やセンターバックの渡辺剛、鈴木淳之介、ボランチの佐野海舟、左サイドの中村敬斗はカタールW杯後に台頭してきた選手だが、チームとして経験が受け継がれ、共有されていることは大きい。
森保監督は「選手たちが日々チームで自分を高め、代表活動の中でやるべきことを徹底してきた結果です」と振り返り、ブラジルに勝つために必要な経験値と準備が選手の自信につながったことを強調する。さらに「経験から修正できた部分もありますし、選手たちが自信を持って戦えるように送り出すことが重要です」と語った。
守備に関しては、ブラジル戦の前に2-2で引き分けたパラグアイ戦の教訓も生きた。森保監督は「最初に相手にハイプレッシャーをかけながらボールを奪い、カウンターを仕掛けるというコンセプトを共有しました。ただ、相手のレベルが上がると勢いだけでは奪えません。そのため、メリハリを持ってプレッシャーをかけるタイミングを工夫しました」と説明。谷口が中央から統率する3バックは1対1で局面を制し、後ろの守備を安定させながらハイラインの戦いを支えた。
攻撃面では、サイド攻撃を起点に得点を奪えたことが象徴的だ。「世界のトップでも、中央を割らせてくれない中で、最後に展開してチャンスを作り、得点に結びつけられたのは、選手たちが試合の流れを読んでチャンスメイクした結果です」と森保監督。
特に右サイドは堂安を起点に、伊東がドリブルでもランニングでもどんどん縦を狙い、ブラジルに脅威を与えた。それに応じて左側の中村も効果的な攻撃参加を繰り出した。
選手交代で伝えた〝意図〟
コーナーキックから上田の逆転ゴールが決まったのは後半26分だった。日本は直前に3枚交代が用意されていたが、この得点が決まったことで、森保監督はプランを少し変更した。上田から同じFWの町野、中村に代えて相馬を入れるところまでは同じだったとみられるが、もう一人、準備していた右ウイングバックの望月ヘンリー海輝を一度ステイさせ、ボランチの田中を入れたのだ。
その田中と交代でピッチから下がることになった南野は、ディフェンスリーダーの谷口にキャプテンマークを託す。南野がいたシャドーのポジションには鎌田が上がり、ボランチは守備強度の高い佐野と田中の二人で、攻守のバランスを取りながら、反撃が予想されるブラジルの攻撃を中盤で堰き止める役割を担う。逆転に向けて上がっていた熱を適度に落ち着かせる効果を期待する意図があったと考えられる。
前線に投入された町野は「3点目を取りに行こうと思って準備していたけど、(出る前に)点が入ったので。守備の時間が多くなるかもしれないと言われて、そこで僕も腹を括った」と振り返る。選手交代を準備しているときに戦況が変化することはサッカーの試合では珍しくない。そこで臨機応変に意識を変えられる選手、伝えられる監督やコーチの存在が、そうした状況で勝負に直結してくる。
