中国の『会社法』は中国共産党組織の活動に必要な情報を提供しなければならないと規定している。これは重要な情報が流出する可能性があることを意味する。このほか人材のリクルートを通じて、日本企業を定年退職した技術者やマネジメント人材を高額な年俸を提示して雇い、技術やノウハウを吸い上げている可能性もあり、こうした問題意識についても記す。
さらに本書では逆に中国を制する米国法についても日本企業は留意する必要がある点を指摘する。例えば日本企業が米国連邦通信委員会(FCC)の認証禁止対象となっている中国企業からのOEM(相手先ブランドによる生産)で供給を受けた電子機器をアメリカに輸出する場合、ブランドやラベルが変更されたとしても認証禁止の対象になるので注意が必要だという。
さらに、中国企業によるデータセンターの建設投資が日本国内で拡大している点についても懸念を示し、リスクを明確にする必要があるという以下の指摘も的を射ている。
「情報流出」「クラウドの意図的な誤作動を通じた社会的混乱」「日本のサーバの接収」「日本のクラウド事業者の競争力喪失」など、リスクは大きいと考えている。
首相として何を実行するか
本書を通じて著者は、日本の国益を保持しつつ、世界に伍して戦う経済の実力を維持・強化していくために、経済安全保障上のリスクを回避する方策をとるべきだという強いメッセージを発信している。本書に詰まっているのは現在の日本への警鐘であり、真に強い日本を作るためには取れる対策はしっかり講じておくべしという指針を示す。
高市氏が首相在任中にどれだけの成果を上げられるかは、今後の手腕次第である。強い経済の力を持つ国家の姿はいかにあるべきか、リーダーが指導力を発揮することでその道筋を示してくれることを期待したい。本書は2024年夏の刊行だが、高市新首相の誕生のタイミングで幅広くビジネスパーソンに読んでもらいたい一冊である。
