―― 何事もうまく行かないのが当然だと考えると、何かあっても気持ちをとり直せるような気がしますが、積極性がなくなるような気もします。
舞田:ぶつかって突き抜けられなければ腹を切るというのが日本人の発想にあります。そうではなく弾き飛ばされてもへこんでも、もう一度立ち上がっていかなければいけない再起の力と考えてください。行動しなければへこまないという消極的な考え方とは基本的に違う。レジリエンスは精神力の持ち方ですが、これを伝えていくのは難しい。数種類のトレーニングを組み合わせ、多様な角度から取り組むことで折れない心を作り上げていきます。私の研究では、6つのトレーニングを通して総合的にレジリエンスを身に付けて行く技法が最適だと考えています。
折れない心を築く6つのトレーニング
―― 具体的に教えてください。
舞田:1番目は自分の軸をもつこと。軸とは、しっかりとした自分の行動、方向性を判断する価値観といえます。日本人は、とかく評判や他人の顔色を伺う傾向にあり、他人軸に振り回されてしまいます。これだと未知の局面や否定された時に太刀打ちできない。自分の価値観を自覚できているかどうかレジリエンスにつながります。2番目は人とのつながりです。自分軸を持ちつつ、人が支えてくれたことを振り返ってみる。そうすると人に与えたことよりも人から受けたことの方が多いはず。これに感謝し、人に尽くすことを行動に出せば、良好な人間関係を構築できます。行き詰まったとき、何で誰も助けてくれないのかと思うのか、人に尽くしていないからと思うのかでは大きな差になります。
3番目は柔軟な考え方です。認知行動療法にも取り入れられていますが、認知の考え方を変えること。コップに水が半分しかないと嘆くのか、まだ半分あると希望をもつのか、ポジティブにみる姿勢です。4番目はアクションを組み立てるための力です。心の持ち方などを変えるだけでなく具体的なアクションを起こす力がなければいけません。何を目指すのか長期的な目的に向って構造、課題、アクションをシンプルに分け遂行する力です。
5番目は自己コントロール。自分の精神状態を安定させるためのトレーニングです。事象を見てすぐに判断しない。驚かない、動揺しないように訓練をします。瞑想などで動じない心をもつことは回復力のベースになります。最後の6番目が良い習慣です。心身の状態をキープするには、生活が乱れていてはできません。睡眠、適度な運動、バランス良い食生活などを心がける健康の基本です。