レジリエンスという言葉(行動)に注目したい。直訳すれば回復力、復元力などを意味し、日本では企業システムやハード面で予期せぬ事象への対応などに使われることが一般的という。だが、大事なのは取り換えができるシステムやハード対応ではない。人である。社員が挫折や困難な状況に打ち勝つ「変化に強い心」を養える取り組みこそ、本来的なレジリエンスと捉えるべきではないか。これがうつ症状への予防につながる。気が付かないうちに忍び寄る状況にも、気づきを与える効果があるように思える。そこで、人事・組織マネジメント分野で活躍するHRビジネスパートナーの舞田竜宣社長に企業が直面する問題とレジリエンスについて聞いた。
舞田竜宣(まいた・たつのぶ)
グロービス経営大学院教授、多摩大学大学院(MBAコース)客員教授。東京大学経済学部卒。外資系人事コンサルティング会社の日本法人社長を経て、HRビジネスパートナーを設立。リーダー育成、M&A、グローバル経営、事業再生などの人事・組織マネジメントを手掛ける。日本行動分析学会会員、国際行動分析学会会員。主な著書に『24時間の使い方で人生は決まる』(ファーストプレス)『社員が惚れる会社の作り方』(日本実業出版社)『10年後の人事』(日本経団連出版)など多数。
組織の強者に広がるメンタル不調
―― グローバル化とダイバーシティへの対応は、日本企業にとって必携とも言うべきキーワードになっています。まだ、一部企業の話なのかもしれませんが、企業環境は確実に変化しています。その状況では、働く人のメンタルにも変化が生じると思いますが、客観的に企業を見ている立場でどのような感じ方をされていますか。
舞田:日本企業の生きる道は、国内に踏みとどまることではなく海外に活路を見出すこと。問題なのは、この流れに組織が対応しきれていないことがあげられます。乱暴な表現になりますが、以前であれば職場うつなどメンタル問題は、組織内の弱者に多く見られた現象ですが、今は強者といわれてきた人たちの問題にまで広がっているように見えます。グローバル対応や新規事業開発などに携わる人材たち、言い換えると企業の競争力の源泉とも言える人たちが、強度のストレスにさらされている。それも昔なら一部の人たちだけが関わる仕事であったものが、今は多くの人が関わるようになってきた。例えば、心の準備もないままに新興国への赴任が決まったり、新規事業の最先端を担うようになったり、とミッションを抱え込んでいます。大企業だけのことではないとみています。