イングラムはその後、話題を変えて、MAGA派に沿っているはずのトランプの考えをさらに確認していった。例えば、米国に大量の中国人留学生がいるという考えにMAGA派の人々はあまり乗り気ではないのに、最近、大統領は留学生の国外退去を撤回し、より多くの留学生が中国からくる可能性に言及していることについて質した。するとトランプは「米国には巨大な大学システムがあり、留学生を止めるとその半分が破産する」と述べた。
米国内経済について、多くの人々が物価高による生活費不安を抱えている点を問われると、それは「民主党による詐欺」であり、「世論調査は偽物」と言い放った。移民についても、イングラムに「何万人、何十万人もの外国人労働者を国内に流入させるわけにはいかないでしょう」と問われると、「そうだが、才能ある人材をまねきいれなければならない」と反論した。
そして、「国内には十分な才能ある人材がいます」との反論には、「いや、いない。失業者の列にならんでいる人を連れて来て、ミサイルをつくれ」というわけにはいかないと述べた。これはトランプの大量の移民が米国人の職を奪っているから移民を大幅に削減しなければならないというMAGA派に沿ったこれまでの主張とは大いに異なっていた。
自分の都合で動くトランプ
Fox Newsのトランプに対するインタビューは、多くの場合、トランプ寄りで、トランプが嫌がるような質問はしないため、自分のホームグラウンドでのインタビューと思っていたであろうトランプは、イングラムの質問に戸惑ったはずである。
イングラムがなぜこのような質問をしたのか本当のところはわからない。彼女は、これまでそうしてきたように、MAGAという岩板支持層からずれていくトランプにそのような支持者たちが何を望んでいるかを伝え、トランプを支持層につなぎとめることでトランプの人気を保とうとしたのかもしれない。もしくは、今回はそうではなく、MAGAから離れていくトランプに対して、自分とトランプとの間に距離が生じようとも、自分はMAGAの民衆に寄り添うという姿勢を打ち出したのかもしれない。熱烈なトランプ支持者でありながら、最近袂を分かったマージョリー・テイラー・グリーン下院議員のように。
このインタビューの中でトランプは、「忘れるな、MAGAは俺のアイデアだ。MAGAは他の誰のアイデアでもない。MAGAが何を望んでいるか、俺ほどよく知っている者はいない」と述べた。ただ、このインタビューからも明らかなように、トランプが自分を大統領に押し上げたMAGAの人々から離れつつあることだけは確かなようだ。
自分の都合で揺れ動くトランプの率いる米国と、巨大な隣国中国の間に立って日本は難しい舵取りを迫られている。二つの超大国に挟まれ、資源や食料に乏しい島国日本は、常に微調整しつつ合わせていくしかないのである。
