第二に、中国が現状維持国かどうかは、中国の振る舞いの分析が不可欠だ。第三に、論文は中国の領土的主張は、台湾と一部国境地域に限られていると述べ、それ以外に領土的野心はないというが、今問題なのは19世紀型の海外領土拡張ではない。今、周辺地域、特にシナ海は非常に危険な状況になっている。
第四に、論文は中国にとり最重要なことはレジームの安定と内政であり、海外膨張は考えられないと議論しているようだが、内政と外政は一体であり、別物ではない。海外展開や覇権は国威発揚を通じて政権安定にもなり得る。
第五に中国が増大する国力を何に投入するのかが重要だ。例えば、国防費の増大は軍の拡大や展開の増大に繋がり、いつでも世界的レバレッジになる。中国はそれを「大国」の当然の役割だと観念している可能性が高い。
増大する国力を何に使うのかが重要だ。中国の夢や米衰退論というナラティブも同様だ。さらに言えば、中国のサイズ自体が他国には脅威になり得る。
要するに、①中国が民主化し、②国防予算を抑制し、③ナショナルなドライブを抑え、近隣諸国との安定した関係を追求し、④世界の国々との国際協調を実践することが重要なのである。発展する国は常に他国から警戒される。それは発展の代償でもある。
日本も中国の比ではないが、80年代にそれを経験した。それに対処するのは、良き世界の一員として国際協力、国際協調に参加すること以外にない。世界も、それに応じて、国際機関等を改革するのは当然である。
独り相撲をするトランプ
世界の多極化論は中露のナラティブだが、世界が多極化しても、紛争は無くならず、却って紛争は増大するかもしれない。それゆえ、国際協力のために一層力を結集する必要がある。
中国を含む力を持つ国が、その他の国々と協力して、主導する必要がある。国際社会には、常にリーダーの役割を果たす国家群が必要。中国を含めていわゆるグローバル・ガバナンスを強化していく必要がある。
「米国が米国を転覆しようとしている」との観察は、言い得て妙だ。トランプの方針と手法は混乱している。
混乱して独り相撲になり、自分の足を撃ってはならない。米国は、まず同盟国との結束を強化すべきだったのに、あろうことか最初に同盟国を攻撃してしまったである。
