2025年12月15日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年12月15日

 ニューヨークタイムズ紙コラムニストのポルグリーンが、11月21日付けの論説‘The Thucydides Trap Is Coming for America’において、トランプは自分で「トゥキディデスの罠」に飛び込んでいる、中国は現状維持を主張、世界の頂点で米国が米国を転覆しようとしている、と述べている。要旨は次の通り。

(dvids)

 「トゥキディデスの罠」とは、台頭国家が覇権国家に挑戦する時に戦争が起こるという理論である。

 トランプ第二期政権はこの前提を覆している。トランプ政権は、世界秩序を自ら破壊している一方、(台頭国家である)中国が現状維持を主張している。

 「トゥキディデスの罠」に飛び込もうとしているのは中国ではなく、米国だとの逆転が起きている。いわば、世界の頂点で、米国が米国を転覆しようとしている。

 最近の研究(学術誌 International Security に掲載された東アジア研究者3人による挑発的な論文)は、「中国は体制安定を重視する現状維持勢力であり、外向きというより内向きの性格が強い」と言う。それは、彼らが中国の公的演説から学校教育本に至るまで膨大な資料を分析して得た結論だった。

 中国の領土的主張は、台湾と一部国境地域に限られている。「中国の狙いは明確で、持続的で、限定的だ」と彼らは書く。

 しかし、中国が善意ある、あるいは無害な行為者である訳ではない。南シナ海での攻勢、新疆での弾圧、香港での締め付け、台湾人の意思に関係なく台湾を領有しようとする執念は、アジアの平和と秩序に重大な挑戦を突きつけ、人権の基本原則を侵害している。

 日本との外交的対立も激化し、中国の脅威能力を示威している。しかし、こうした行動はいかに残虐であっても、世界秩序の再構築を狙うものではない。


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