一番の関心はCNNの帰趨
しかし、トランプがパラマウントの肩を持つのはそれだけの理由ではなさそうだ。なぜならトランプは、この件についてワーナー社の傘下にあるCNNについて言及するようになったからである。
10日、ホワイトハウスで買収劇について質問されたトランプは、記者団に対し、この買収にCNNも含まれるべきだと答えたのである。Netflixの買収案には、CNNが含まれていない。トランプは、いかなる買収案にもCNNが含まれるべきであり、CNNが含まれないならば切り離して売却されるべきとまで述べた。
また、CNNの経営陣は刷新されなければならないとも述べている。関係者によるとこれはパラマウント案の肩を持ったというよりも、Netflixが買収した場合でもCNNが分離されなければならないという、何が何でもCNNを切り離したいという意図の表れであった。
トランプとCNNの間には確執の歴史がある。大統領一期目からトランプを厳しく追及し批判するCNNに対し、トランプが「フェイクニュース」と呼んで嫌ってきたことはよく知られている。一期目においてホワイトハウスでの記者会見でのアコスタ記者との騒動は有名だ。アコスタ記者がトランプの発言にかぶせる形で執拗に質問し、トランプが「もうたくさんだ」と述べているシーンや、トランプが「おまえは無礼なひどい人間だ」と言っているシーンなど枚挙にいとまがない。
シークレットサービスはアコスタ記者のホワイトハウス入館証を取り上げ、CNNは裁判に訴えている。トランプも後に名誉棄損でCNNを訴えるなどしており、とにかく嫌ってきた。
そのCNNが今回の買収劇で俎上に上がったのである。もはや、ストリーミング市場の寡占が一番の問題ではなく、CNNの帰趨がトランプにとって一番の関心事になったように見える。
パラマウントを推す〝世論〟
ただ、トランプを抜きにしても今回の買収では、パラマウントを推す向きが強い。Netflixが勝った場合、これまでの映画はまず劇場公開するというビジネスモデルが大きく棄損する可能性があるからである。
シアター系とも呼べる劇場公開モデルを支持する人々はNetflixが負けることを望んでいる。寡占が進めば、映画産業に関わる多くの人々も競争力を失い、安く買いたたかれることになるためである。
