エプスタイン事件の書類公開は、トランプの弱さを示す兆候となった。書類の内容次第で、エプスタイン事件がトランプを悩ませ続けるかもしれない。
習近平はここ数年で最も強力な状況で今年を終わろうとしている。彼は危険な5年間を乗り切った。中国から発生したウィルスのパンデミックは世界的惨事を引き起こしたが、習近平は中国に責任追及が向かうのをどうにか阻止した。米国の関税措置は、中国の国際市場へのアクセスを脅かした。それでも中国は、トランプの貿易戦争に対して強硬姿勢をとり、レアアースや重要鉱物の支配力を使って米国に関税引下げを迫った。
レアアースの「武器」化は、台湾有事を巡る米国の計算をも変え得る。中国の新たな自信は、高市首相の台湾発言を機にした対日攻撃にも表れている。
強権者同士の覇権争いでは、習近平が優位に立っている。立法、司法、メディアをほぼ完全に掌握し、トランプが羨望するのも無理からぬ。中国では政府批判や混乱の兆しは稀だが、探せばそうした兆候は存在する。
権力掌握から10年、習近平は政治・軍事の指導者を異常な速度で粛清している。これは、習近平自身の猜疑心の表れか、腐敗の根強さを示している。10月の韓国でのトランプとの会談で、習近平の側近達が恐怖に満ちた表情をしていたのも無理はない。彼らの前任者の多くが最近粛清されたからだ。外相、国防相2人、将軍9人、共産党国際部幹部等だ。
一方、トランプは政敵の一人、元連邦捜査局(FBI)長官ジェームズ・コミーを投獄しようと試みたが、最近裁判所によって退けられた。これはトランプにとっては苛立たしいことだったろうが、政治制度が依然として強靭なことを示しており、良いことだ。トランプがどう考えようと、怯えた側近に囲まれる指導者は、どの国にとっても健全なことではない。
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三人の奇妙な共通点
ラックマンが年末に当たり、世界の三大指導者の立ち位置を評価し、習近平が最も優位にあると言う。上記ラックマンの分析は、バランスの取れた評価だと思う。
今年は、国際秩序にとり危機の年として記憶されるだろう。世界経済は、トランプ関税に何とか適応して乗り切った。
ここ一年、国際社会は酷く個人化され、それが必然的に独裁者の国際政治になってしまっている。そこには、民主的な価値や世界観はない。グローバリズムや国際協力は禁句になった。
世界を指導すべき米国のトランプの2025年国家安全保障戦略(NSS)の記述がそれを象徴している。世界は酷く没価値になってしまった。
「侵略戦争」が何時の間にか通常の戦争になり、起点を無視した和平が試みられる。トランプのウクライナ和平仲介には、全く価値の判断がない。世界政治は益々「軽い取引」をし、それが国際政治を不安定にしている。
今の三大強権指導者の何れもが、100年以上前の世界を理想としているようだ。時代錯誤である。人類は、二回の大戦を経て、大きな教訓を学び、今日の世界があることを理解していない。
