国際的な視点でのサケの不漁要因
下の表はマスコミ報道で見たり聞いたりすることがない、日本と米国のサケ資源に関する考え方の違いです。筆者自身も長年にわたり誤解させられていました。
日本では、サケの人工ふ化による種苗生産と稚魚放流を重視してきました。多くの日本人がサケの回帰は稚魚放流によって守られているととらえていることと思います。ところが、そのサケの回帰の激減が止まらず社会問題になっています。
北海道もひどいですが、三陸ではさらに悪く、それでもサケを捕まえて種苗生産に回そうとしています。これでは恐らく絶滅に向かってしまうことでしょう。
一方で、米国はサケの回帰が年によって凸凹はあるものの安定しています。米国ではサケの資源管理に関する日本の考え方と真逆です。種苗生産ではなく、自然産卵を重視しています。種苗生産はあくまでも補助的な役割となっています。
米国では、稚魚放流は自然産卵で生まれたサケに比べて生存率が低いと分析されています。つまり日本は、弱い稚魚放流を重視してしまっているのです。
米国では、エスケープマネジメントという資源管理の手法をとっています。これは産卵に必要な数のサケが遡上するまで漁業を行わないというものです。このため、毎年十分な数のサケが遡上して産卵する仕組みです。
生息地に関する考え方も両国で大きく異なります。日本では下の写真のように川を堰き止めて全て種苗生産に回そうとします。柵を撤去した後に遡上するサケもいるはずですが、当然自然産卵する魚の比率は大きく減ってしまいます。
また、日本では下の写真のように護岸工事でサケが遡上できなくなっている川が見受けられます。この写真のすぐそばが海です。産卵しても稚魚が隠れる場所もなく、生き残ることはほとんどないでしょう。
一方、米国では自然産卵重視のため、生息地の改善のために大規模な投資を行っています。

