2025年12月24日(水)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2025年12月24日

 また、米国では国際的な水産エコラベルであるMSC漁業認証を取得しています。日本では11年〜14年にかけて北海道のシロサケで、MSC漁業認証の取得を目指しましたが断念しています。

 認証取得には自然産卵が少ないことが壁でした。「天然サケの資源量を回復させる方策が実施されていること、そして回復のための増殖はほとんど行われていないこと」という条件を受け入れませんでした。その後の結果は上述の通りで回帰量は激減し続けています。

どこでおかしくなったのか?

 米国のサケに関する過去の書類を調べてみました。すると自然産卵を重視してこなかったことが、日本のサケを減らしてしまった最大要因だったことが分かります。結果は否定できません。

 日本の文献を調べていると、米国と同様の視点で分析しているものが出てきました。04年と、20年ほど前のデータです。

さけます・内水面水産試験場 道東支場のデータをもとに筆者撮影 写真を拡大

 上の表がそれです。河川回帰率は、自然産卵魚が人工ふ化魚の約45倍になっていると分析しています。

 04年のサケ類の漁獲量は約29万トンもありました。それが今では1万5000トン程度になってしまい、来年はさらに減少という悲惨な予想になっています。

 これ以外にも同じような指摘があったのかも知れません。もしこの時に気づいて自然産卵重視に方向転換していれば、今のような悲惨な状態になっていなかったことでしょう。関係者の中には、ふ化場を止めてでも自然産卵を重視すべきと考えている方がいるのではないでしょうか。

 米国のサケに関する文書(affa Fisheries Fund )ではふ化場のサケに関して次のように紹介されています。「ふ化場は、ダム建設や生息地の劣化で失われた漁業を補充するなどの評価もあるが、野生サケ科の個体群や多様性を低下させてしまう。またふ化放流されたサケは、野生のサケより自然環境での回復力が劣るなど生存率が低いことも記録されている」

 また、ふ化場が野生サケ科の個体群に与える調査結果では、次のような文言があります。「世界中の査読付き研究の80%が淡水および海洋生態系における野生サケ科への悪影響を指摘している」

 筆者はふ化場での種苗放流を完全に止めた方がよいと言っているわけではありません。しかしながら、実際にサケ資源を持続的にしている米国の例を見れば、重視すべきなのは自然産卵と遡上と産卵のためのサケの生息地の改善であることが明らかではないでしょうか。


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