「21世紀版トランプ流モンロー主義」の危うさ
トランプは昨年、カナダを併合して51番目の州にすると述べ、グリーンランドとパナマ運河については、取得の意欲を示した。今年に入り、グリーンランド取得に関しては、国家安全保障上の問題というこれまでの議論を強調し、さらなる意欲を見せている。
昨年12月に公開された米国の「国家安全保障戦略」は、米国は西半球を勢力圏とみなし、そこで卓越した地位を保つと明記している。また、同戦略ではモンロー主義を重視する。モンロー主義は、1823年に第5代米大統領ジェームズ・モンローが唱えた米国と欧州諸国の相互不干渉主義である。トランプは19世紀のモンロー主義を21世紀の今、取り入れ、軍事力と脅しおよび恐怖心で、西半球において領土を拡大し、同盟国や友好国、敵国に関係なく、南北アメリカ大陸の国々を米国に従わせようとしている。国際法を無視した「21世紀版トランプ流モンロー主義」である。それは、危険極まりない主義である。
というのは、習近平国家主席が、21世紀版トランプ流モンロー主義を通じてディール(取引)を成立する可能性は排除できないからだ。中国が米国の勢力圏である西半球に干渉しない代わりに、米国は東アジアに手を出さないという「米中の相互不干渉主義」である。
ロイター通信によれば、ベネズエラの原油の最大の輸入相手国は中国であるが、中国側からみると、原油の総輸入に占めるベネズエラ産原油の割合は4%にすぎない。ベネズエラからの輸入が減少ないし途絶えても、中国はロシア、サウジアラビア、イラク、マレーシアなど他国からの原油輸入で補足でき、影響は小さいと言われている。
また、台湾との「完全な統一」は習の決意であり、大きなレガシー(政治的功績)にもなり、ベネズエラ救済よりもはるかに意義が大きいことは明らかだ。21世紀版トランプ流モンロー主義に基づいた南米と東アジアのディールはあり得る。
習は、21世紀版トランプ流モンロー主義を都合良く利用して、米中の確固たる勢力圏を確立する――これは、日本と台湾にとって最悪のシナリオになるだろう。21世紀版トランプ流モンロー主義とベネズエラへの地上作戦は、勢力圏の分割と明確化により、新たな世界秩序の構築に向かっている。
今春、ワシントンを訪問し、日米首脳会談を行うことになった場合、高市早苗首相は米中が大接近し、21世紀版トランプ流モンロー主義を通じて勢力圏のディールを成立させないようにトランプを説得することが、高市の第一の責務になる。
