2026年1月16日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年1月16日

 伝えられるところでは、このうち①と②を統合して「アメリカ軍」(Americas Command あるいは AMERICOM)とし、④~⑥を「国際軍」(International Command)に統合する計画が、統合参謀本部で策定中だ。その重点は欧州と中東から資源をシフトさせ、アジアや西半球における軍事作戦を拡大することにある。

 この報道が正しければ、今後米軍は3つの地域統合軍(および5つの機能統合軍)に再編・縮小されることになる。これは、少なくとも過去数十年の中で最大規模の改革となるが、特に欧州について言えば、どの程度の兵力がどこから削減されるのか、また北大西洋条約機構(NATO)と中東、およびテロ対策を一つの統合軍とすることの効率性など、検討課題は多いはずだ。

 ところがこのような中で、米国は2027年までに通常戦力による防衛の責任を欧州に移譲し、もはや自動的な安全保障の保証国としての役割を担わないと通告したと、ロイター通信が報じた(12月6日付)。あと一年強の間に米国に依存する通常戦力を補完できるだけの防衛力を欧州が構築するのは不可能だ。トランプ政権の兵力再編は、欧州において一定の防衛力ギャップの発生を許容することが前提となっている可能性が高いと思われる。

核戦力の柔軟性

 もうひとつは、核戦力の柔軟性におけるロシアとのギャップである。

 ロシアは核弾頭搭載可能で欧州のほぼ全域をカバーする中距離弾道ミサイル「オレシニク」を昨年11月から量産開始し、ベラルーシなどに配備するとされている。もちろん、ロシアは他にも核のトライアド(ICBM、SLBM、戦略爆撃機)を保有している。

 これに対し欧州における米国の核抑止力は、核シェアリング対象国のドイツ、ベルギー、オランダ、イタリアに配備される最新型戦闘爆撃機F-35A Block4に搭載の核爆弾B61-12、そして米国が有する戦略核戦力の二つだけだ。

 このような中で欧州側も、英仏が核抑止力のギャップを埋めるべく対応を強化しつつある。核搭載能力をもつ仏のラファール戦闘爆撃機に加え、作年6月には英国が1998年に放棄した核航空任務を再開し、米国のB61-12核爆弾搭載可能なF-35A戦闘爆撃機12機を取得する旨を発表した。さらに翌7月には英仏両国が、それぞれの核戦力の独立性を維持しながらも二国間の核協力を深化させ、両国の核戦力が欧州の平和と安定に貢献し得ることを宣言している(ノースウッド宣言)。

 欧州側による核抑止力強化に向けた努力は画期的と言えるが、少なくとも核戦力の柔軟性において、欧州正面でロシアとの間にギャップが生じつつある可能性については深刻に受け止めざるを得ない。

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