2026年1月12日(月)

家庭医の日常

2026年1月12日

ナトリウムとカリウム

 人間の細胞が正常に機能するには、ミネラルが必要である。「ミネラル」は、酸素、炭素、水素、窒素という主要4元素を除く無機元素の総称で、中でもナトリウム、カリウム、塩素、カルシウム、リン、マグネシウムは、体内に比較的豊富にあって、心臓、脳、骨、筋肉の機能に重要な役割を果たしている。

 「電解質」という言葉も使われるが、これはミネラルの一部で、水に溶けると電荷を帯びた陽イオンや陰イオンに分かれて電気を通すようになる物質の総称である。ナトリウムもカリウムも、体内に陽イオンとして存在する電解質だ。

 体内のナトリウムの約50%は細胞外にある体液(血液や細胞間液)に存在し、カリウムのほとんど(約98%)は細胞内に蓄えられている。ナトリウムは体内の水分を保持し、過剰に摂取すると血液の水分が増加するため血圧が上昇する。カリウムは、体内の余分なナトリウムと水分を尿として体外へ排出し、血管の緊張を和らげて血圧を下げる。

 身体には、外部環境や体内の変化に対して内部環境を一定に保つ「ホメオスタシス(恒常性)」と呼ばれる調節機能が備わっている。カリウムについて言えば、細胞内に大量に蓄えられたカリウムを使ったり、カリウムの摂取量と排出量のバランスをとったりして、血液中のカリウム濃度は、通常3.5〜5.0 mEq/Lに保たれている。もしこの範囲を超えてカリウム濃度が高すぎたり(高カリウム血症と呼ぶ)、低すぎたり(低カリウム血症と呼ぶ)すると、不整脈や心停止などの重大な結果を招くことがある。

 カリウムは電解質を含む食べものや飲みものから体内へ摂取され、主に尿とともに体外へ排出される。また、消化管や汗からも失われる。

 健康な腎臓は、カリウム摂取量に合わせてカリウムの排泄量を調整している。特定の薬剤や疾患は、カリウムの細胞への出入りに影響を及ぼし、血液中のカリウム濃度を大きく変動させる。

尿ナトカリ比

 厚生労働省は、2023年3月に『ナトカリ手帳』を公表した(2024年1月改訂)。「ナトリウム(食塩)とカリウムを測って健康に」という副題がついているように、ナトカリ比についての解説、ナトリウムの減らし方とカリウムの増やし方についての具体的な提案、そして日々の食事と行動を記録することができるようになっている。ただ、ナトカリ比をどこでどうやって測定するのかの具体的な記載はない。

『ナトカリ手帳』では、イラストを交えナトリウムやカリウムについて解説している

 この『ナトカリ手帳』は、厚労省の予防・健康づくりに関する大規模実証事業(20〜22年度)の一環として、日本高血圧学会へ委託して開発された啓発ツールだが、一部の企業・自治体では利用されているものの、まだ広く普及しているとは言えない状況だ。

 その日本高血圧学会では、24年10月に尿ナトリウム/カリウム比(尿ナトカリ比)ワーキンググループの「コンセンサスステートメント(合意声明)」を公表している。健常日本人における尿ナトカリ比の目標値として、「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省2020年版)の食塩とカリウムの摂取目標に相当する2未満を「至適目標」に、日本人の平均値未満に相当する4未満を「実現可能目標」に設定している。


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