<本日の患者>
K.N.さん、52歳、男性、コーヒー豆販売店オーナー。
今回は、2023年7月の『今でも大事なフレイルケア どう診断し、対処するのか』で紹介したフレイルを心配していたA.N.さんの息子、K.N.さんの病気のエピソードについて話したい。
始まりはちょうど5年前の師走、年末へ向けて世間が何か浮き足立っているような季節だった。前夜に急に左足が痛くなったK.N.さんは、私が働いているクリニックへ朝一番で駆け込んできた。初めての受診だった。ひと通りK.N.さんの話を聴いて診察をした後で交わした会話は、今でもよく覚えている。
「痛風だと思います。これから詳しく説明しますが、K.N.さんは痛風って聞いたことありますか」
「えっ、痛風ですか。この前、仕事仲間の一人が大騒ぎして病院へ行っていろいろ検査して痛風だったって言ってたんで、何となくわかるようなわからないような。でも、先生、私はまだ何にも検査とかしてませんが、それしなくても診断がわかるんですか。仲間は病院で採血とかレントゲンとかエコーとか、それから足に針も刺されたって言ってましたよ」
痛風とは
痛風は、典型的には足の親指(第1足趾)の付け根の関節(中足骨趾節骨間関節、中足趾節関節とも呼ばれる)に突然の激しい痛みを引き起こす関節炎の一種である。他の関節に症状が出ることもある。原因は、尿酸ナトリウムの結晶(尿酸結晶)が関節など体内の組織に沈着することによって引き起こされる。
痛風を起こしやすい危険因子としては、男性、肥満、高血圧、アルコール摂取、利尿剤使用、肉や魚介類を豊富に含む食事、慢性腎臓病、フルクトース(果糖)を多く含む食物や飲料、などがある。人種的には、台湾、太平洋島嶼、ニュージーランドのマオリの人たちに痛風が多いと言われ、高所得国にも多く発生する。