2026年1月12日(月)

家庭医の日常

2026年1月12日

 特に、専門細分化が進みプライマリ・ヘルス・ケアがまだ整備されていない日本では、患者が複数の医療施設を巡り、多数の薬を処方され、診療は継続性を欠き断片化・非効率になることが避けられない。患者の心身や家計への負担を増やし、生活の質を低下させるだけでなく、保健医療システム全体の効率性や安全性にも悪影響を与える。

マルチモビディティを考慮した診療ガイドライン

 諸外国の診療ガイドラインでは、徐々にマルチモビディティを考慮するようになってきている。たとえば、下記の機構・学会が作成した高血圧の診療ガイドラインでは、高血圧患者でCKDがある場合のカリウム摂取について、次のように記載されている。

 なお、これらの診療ガイドラインは、一般の人が自由にインターネットで全文を参照することができる。日本の診療ガイドラインは、最新版へ自由にアクセスできる環境が提供されていないことが多く、エビデンスを考慮しつつ患者と医療者が相談できる診療へのバリアになっている。

英国医療技術評価機構(NICE)(23年改訂版)
 「血圧を下げる効果があるため、食塩の摂取量を減らすか、塩化カリウムを含む代替食塩に切り替えて、食事中のナトリウム摂取量を抑えることを推奨する。しかし、高齢者、糖尿病患者、妊婦、腎臓病患者、ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などを服用している人は代替食塩を使用すべきではない」
米国心臓協会(AHA)/米国心臓病学会(ACC)(25年版 )
 「血圧の高値または高血圧の成人では、その予防または治療のために、理想的には食事からの適度なカリウム補給が推奨される。ただし、CKDがある場合、またはカリウム排泄を低下させる薬剤を使用している場合は例外で、血清カリウム値のモニタリングが必要となる」
欧州心臓病学会(ESC)(24年版)
 「CKD患者、または一部の利尿薬、ACE阻害薬、ARB、スピロノラクトンなどのカリウム保持薬を服用している患者では、食事中のカリウム摂取量を増加させる場合、血清カリウム値のモニタリングを考慮するべきである」

 「わぁ!カリウムについてだけでも、真逆のことが勧められていて、私たちには簡単には区別できず怖いです」

 「そうですね。C.S.さんの映画館で昨年観た『サンキュー・スモーキング』(監督ジェイソン・ライトマン、2005年、米国)を思い出します」

 「え、あの映画が何か?」

 「アーロン・エッカート扮する巧みな話術でタバコを擁護し続けるタバコ業界の宣伝部長が『喫煙はアルツハイマー病の発症を遅延させるから有益』と言ってました(一応そういうエビデンスはあることにはあるんですが……)」

 「そうでした、そうでした。あれに勇気づけられた愛煙家もいたんでしょうね(笑)」

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