2026年1月21日(水)

#財政危機と闘います

2026年1月21日

国民負担の定量評価

 インフレ税は、国民に「見えない増税」を課す仕組みである。筆者は、「“隠れた増税”インフレ税…財政再建が進んでも、国民の暮らしが貧しくなるワケ」(Wedge ONLINE)でインフレ税を機械的に試算し、23年度ではフローとストック全体でインフレ税収は50.3兆円と推計した。そのうち、所得税や消費税等のフローのインフレ税収は11.6兆円、日銀券や国債等のストックからのインフレ税収は38.6兆円であった。

 この試算をもとに、24年度現在のインフレ税を機械的に計算した結果、フローでは所得税5.9兆円、消費税4.3兆円、その他税0.8兆円、社会保険料3.5兆円、合計14.5兆円、日銀券や国債等のストックからのインフレ税収は41.0兆円であった。このフローとストックのインフレ税収を合計すると総額55.5兆円と機械的に試算できる。

 24年現在では厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば日本には5482.5万世帯あるので、単純平均で一世帯当たり、101.3万円(フロー26.4万円、ストック74.9万円)負担している計算となる。

 日本では、家計金融資産の約半分が現金・預金であり、インフレによる負担は大きい。資産を株式や不動産に分散している層(多くは高所得層)はインフレで資産価値が上がる可能性があるが、預貯金中心の層(多くは低所得層)は損失を被るため、格差が拡大する。この構造的問題は、社会の分断を深めるリスクを孕んでいる。

求められる説明責任

 歴史的事例は、インフレが政府債務軽減に有効であることを示す一方で、制御不能なインフレが国民生活と経済に深刻な損害を与えることも示している。インフレ政策が成功するためには、名目成長率を高め、金利を抑え、PB黒字を維持することが不可欠であることを示している。そして、国民負担の定量評価は、インフレ政策が「見えない増税」として家計に影響を与え、格差を拡大する可能性があることを明らかにした。

 高市内閣のインフレ税を利用した財政再建策は、財政当局から見れば、国民の増税や歳出削減への拒否反応が強く、逆に減税が強く求められる昨今の状況下で、巨額な政府債務残高の存在を考えれば、必然的な選択肢となるのであろうが、その成功には極めて精緻でギャンブルにも似た政策運営と、目に見えない巨額の負担を国民へ課すことの説明責任が求められる。

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