2026年1月20日(火)

World Energy Watch

2026年1月20日

本当に欲しいのはレアアース?

 トランプ大統領の狙いはレアアースをはじめとする資源だろう。1980年代半ばまで米国が世界のレアアースのサプライチェーンの過半を握り、中国の影も形もなかった。

 しかし、中国は巧みな戦略により他の供給者を締め出し今世界のレアアース供給の9割以上のシェアを握っている。最近の日本向けの輸出制限にみられるように、時としてレアアースを武器として使う。「お前の運命は俺が握っている」との脅迫だ。

 レアアースがなければ、風力発電設備も電気自動車も作れない。要は、エネルギートランジッションと呼ばれる二酸化炭素を排出しないエネルギーの利用拡大にはレアアースは欠かせない。

 エネルギー転換以上に重要なのは、軍事だ。ミサイルにも戦闘機にもレアアースが必要だ。米国国防総省(戦争省)が必要とする20以上の装備がレアアースを使っているとされる。

 レアアースの供給者が米軍の装備の整備状況を知ることができるのは、国防上の大きな懸念だ。つまり、中国に手の内を知られる安全保障の問題だ。国防総省の最優先課題はレアアースのサプライチェーンの脱中国だ。

 それにしても、なぜ領有まで必要なのだろうか。同盟国企業がレアアースを開発、生産すれば米国の安全保障の懸念は和らぐはずだ。

 米国がグリーンランド領有を譲らない大きな理由は、民間企業による開発が難しいグリーンランドの自然条件と環境意識が高い自治政府にありそうだ。あとで詳細に触れたい。

深まる同盟関係の亀裂

 デンマーク政府は「グリーンランドは売り物ではない」とし、グリーンランド自治領では8割から9割の住民が米国への帰属に反対している。ちなみに、ロイターによると米国でもグリーンランド占有に「賛成」は2割以下、約5割が「反対」、残りが「分からない」だ。

 1月14日に開催された米国とデンマーク、グリーンランド政府間の交渉でも、ハイレベルのワーキンググループの設立以外の成果はなく、根本的な意見の相違が残った。

 トランプ大統領は、会議前に「ロシア、中国が侵攻した場合に犬ぞり2台ではグリーンランドは守れない。米国の力なくしては北大西洋条約機構(NATO)の軍事力は効果的にならない」とグリーンランドに駐留しているデンマーク軍に犬ぞり部隊があることを揶揄し、グリーンランド領有を諦めない姿勢を明らかにした。グリーンランドのデンマーク軍には犬ぞり部隊も配置されているが、小規模とは言え船舶も航空機もある。

 デンマークはNATO加盟国だ。米国が領有しない限り、ロシアあるいは中国の侵攻を防げないというのであれば、NATO軍事同盟に意味がないことになるが、トランプ大統領からの説明はない。

 諦めない米国への牽制もあり、NATOの主要加盟国もグリーンランドでの軍事演習のため軍の派遣を始めた。ドイツ、フランス、スウェーデン、ノルウェーの先発隊に加え、英国、オランダ、フィンランドも演習への参加を決めた。

 1月17日に、トランプ大統領は米国の領有に反対するデンマークと演習に参加する7カ国に2月1日から10%の関税を課すと発表した。

 昨年合意された米国とEU間の相互関税については、1月下旬に欧州議会で承認される予定だったが、この発表を受け白紙になるようだ。同盟関係のひび割れの拡大が止まらない。


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