太陽光、風力発電設備、電気自動車では自国内に大きな市場を作り価格競争力のある製品を生み出し、世界市場に進出したが、REEでも価格競争力のある製品で世界シェアを高めた。
図-2が現在のREEの生産、精錬過程の国別シェアを示している。鉱石生産段階では中国のシェアは69%だが、精錬段階では91%に達している。米国も精錬したREEの24年の自給率は2割しかない。
REEの国別埋蔵量は表の通りだ。38万トンの世界の年産量に対し大きな埋蔵量がある。欧米諸国は、REEのサプライチェーンの拡大に躍起だが、埋蔵量があっても環境負荷の高い分離・精錬工程を引き受ける地域を見つけるのは簡単ではない。
世界一人口密度が少ないグリーンランドであれば垂直統合で採掘から精錬までが可能だが、解決すべき課題がある。一つは、氷に覆われ内陸部にインフラがないグリーンランドでの生産には巨額の投資が必要になることだ。加えて厳冬期があり操業可能な期間も限定される。民間企業が取れるリスクではないだろう。
もう一つの問題は、現在のグリーンランド自治政府は、環境上の問題から生産に対し厳しい姿勢を取っていることだ。開発に乗り出した中国政府系企業も撤退したようだ。
安全保障上の視点から高コストも受け入れ可能な米国政府が領有すれば、この2つの問題も解決し、生産を開始することも可能だろう。トランプ大統領もそう考えたのかもしれない。
全ては米国ファーストのため
レアアースは多くの用途に使用される。永久磁石、発光ダイオード、研磨剤、石油精製、蓄電池、触媒など多くの分野で利用されているが、軍事用にもミサイル誘導システム、レーダー、ソナー、ステルス航空機、戦闘機などに利用される。
このサプライチェーンを中国に握られていることは、米国国防総省には頭痛の種だろう。自国でのサプライチェーン確保が最優先課題だ。
グリーンランドでは南部に2つのREEの鉱床がある。現在、豪州、カナダ、米国企業が初期段階の探査活動中だ。
米国地質調査所(USGS)が確認埋蔵量としている150万トンよりも、はるかに大きな世界最大規模の4000万トン近い埋蔵量があると言われている。REEに加え、リチウムなどの重要鉱物の埋蔵も確認されている。
インフラ、投資、操業、環境規制のリスクがあり、民間企業が探査活動から大規模開発に乗り出すことは難しい。だからといって、米国政府がREE確保、安全保障を目的に同盟国に対し関税を課し、領有のため軍事力の行使まで排除しないとするのは異例だ。
その背景にあるのは、米国ファーストの発想だろう。ベネズエラでの軍事力の行使も、米国の製油所が必要とする重質油の入手が背景にある(『日本のメディアが報じないベネズエラの石油にトランプがこだわる大きな理由 シェール革命では補えないアメリカ人に必須の「ある物」とは?』)。
米国の安全保障の強化は、同盟国よりも優先するのだろう。米国ファーストはどこまで広がるのだろうか。
山本 隆三:著 ウェッジ ¥1,980 税込


