2026年2月5日(木)

家庭医の日常

2026年2月5日

PHCにおけるトリアージとは

 日本では、「トリアージ」という言葉は、もっぱら「災害発生現場などにおいて多数の傷病者が同時に発生した場合、傷病者の緊急度や重症度に応じて適切な処置や搬送を行うために傷病者の治療優先順位を決定すること」という意味で使用されている。大災害やコロナ禍で見聞きした人も少なくないはずだ。

 しかし、トリアージは保健医療の現場でもっと広く導入されている。特に、PHCが整備された諸外国では、トリアージはPHCをよりよく機能させるための鍵となる。

 PHCにおけるトリアージは、「誰が・いつ・どの専門職に診られるべきか」を限られた医療資源の中で最適化する仕組みである。単純な来院順ではなくて、緊急性と必要性を優先して考慮する。そしてその緊急性と必要性は、患者や家族の自己申告に加えて、専門職による評価を組み合わせて判断される。

自分で行うトリアージ

 PHC先進国では類似のトリアージが導入されているが、例えば英国のNHSを例にすると、NHSでは、市民が何かの症状や健康についての問題があるときに、自分や家族がどのような行動を取るべきか、つまり自分で行うトリアージについて、まず『Health A to Z』というウェブサイトを利用することを推奨している。ここでは、多数の疾患、症状、検査・治療、薬剤についてアルファベット順に情報が提供されていて、それ以外に、育児、避妊、メンタルヘルス、妊娠、予防接種の情報も参照できる。

 それぞれの項目で、症状、『NHS111』、GPへの受診予約(緊急/通常)、救急外来受診、救急車要請、診断、治療、セルフケア(すべきこと/ してはいけないこと)、GP受診での診療内容、更なる情報源(リンク)などが、ほぼ標準化されたフォーマットで記載されていて参照しやすい。

 『NHS111』はさらに『111 online』と『Call 111』に分かれている。『111 online』はオンラインで画面上の質問に答えながら、『Call 111』は111番へ電話して標準化された質問に答えながら、それぞれアルゴリズムに誘導されて、自分の症状や問題を「誰が・いつ・どの専門職に診られるべきか」の最適解を探していく。

 『NHS111』で推奨される選択肢(オプション)は、地域のリソースにもよるがおおよそ下記の通りである。

① 999番へ電話する(救急車要請)

② A&E(救急外来)受診

③ 救急治療センター受診

④ 時間外(夜間/週末)担当のGP受診

⑤ 看護師からの折り返し電話を予約

⑥ 歯科/メンタルヘルスの専門家受診

⑦ 登録しているGP診療所へ連絡

⑧ 薬剤師に相談

⑨ 自宅でのセルフケア


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