なぜここまで脆弱なのか
日本の生活インフラは、企業の合理性と国家の無関心の間に落ち込んでいる。企業は株主資本主義の優等生として「安さ」「効率」「株主価値」を軸に最適化し、国家は食料安全保障や医薬品供給よりも経済豊かな国になることを優先してきた。
EUは地球環境の変化から食料政策を重視し、中国は国家戦略として食料主権を確保した。日本だけが、国家戦略と企業行動が別トラックで動いている。その背景には、生活インフラを“知らず知らずのうちに市場に委ねてしまった”という誤謬がある。
台 湾海峡ショックは、遠い地政学ではない。
それは「明日の給食欠品」であり、「来月の介護食不足」であり、「2か月後の抗生物質枯渇」である。
緑色:貨物船 赤色:タンカーを表示している。台湾海峡は世界の物流の大動脈であり、貨物船とタンカーが絶えず行き交う。
「生活安全保障」という新しい視点が必要だ
「生活安全保障」という新しい視点が必要だ。それは、食と薬を“止めない”という最低限の国家機能を再設計するという意味である。
日本の脆弱性は、軍事よりも生活インフラにある。そしてその脆弱性は、国民の目に触れない場所で静かに進行している。
食と薬の供給を“切らさない”ことを、エネルギー政策と同じレベルで議論すべき時期に来ている。台湾海峡ショックは、日本社会に「生活安全保障」という新しい視点を突きつけている。
次回は、なぜ日本が“食と薬”を同じ国に依存する構造になったのか、その歴史的背景と企業合理性の側面から掘り下げる。

