党利党略解散選挙の成否
今回の選挙は石破茂前首相が2024年10月に就任からわずか8日で解散総選挙を行った手法と同じだ。この時筆者は本誌拙稿「【“党利党略“選挙は私たちの責任】政治は「なる」でなく「する」もの、信を問われている日本のデモクラシー」Wedge ONLINEで、「政治の大義」そのものの議論が欠落していると主張した。
この拙稿で筆者はフランスで1997年に起きた任期を2年残した抜き打ち解散の例を示した。当時シラク政府は、国民に不人気の緊縮財政を強いるユーロ導入を実現するために、過半数が確実に維持できそうな時期の任期前選挙を選択したが、国民はそれに「ノン」の判断を与えた。
その結果フランスでは任期満了前の解散は容易にできなくなり、27年が経過した2024年にマクロン大統領が欧州議会選挙で敗北した後、総選挙で政権への信頼と極右「国民連合(RN)」の伸長を止めるために「国民に信を問う」として解散総選挙に打って出たが、ものの見事に惨敗した。選挙を党利党略の道具にすることを嫌ったのだ。
そこでは抜き打ち選挙という手法そのものに対する国民の主体的な政治意識と判断が働いた。今回それはわが国では高市人気の前に掻き消えてしまった。メディアも尻すぼみとなった。
政党支持率と当選者数の乖離
人気・イメージ選挙である限り、国民が本当の意味で高市政権の「政策に信を与えた」と言えないことは、選挙期間中に報道各社の世論調査からも窺える。
初の女性首相に対する高い支持率が石破首相の解散総選挙とは異なった結果をもたらしたとはいえ、選挙戦で正面からの政策論争はなかった。看板に掲げた「積極財政」「減税」についても具体的議論は希薄で、あくまでも日本初の女性内閣の御祝儀人気にあやかった「論争なき、争点不明な選挙」だった。
高市首相が国会会期冒頭解散を宣言した直後の世論調査では(日本経済新聞社とテレビ東京1月23〜25日実施)、内閣支持率が67%で、自民党支持率は42%だった。初めて60%台に下がったとはいえ、依然として歴代内閣と比べると高い支持率を維持していた。
その一方で自民党支持率は40%付近で横ばい状態を続けた。党への支持率が大きく変化していたわけではなかった。しかし、選挙戦では自民党の優勢が伝えられ続け、そのまま勝利となった。
それを可能にした理由のひとつは野党に対する有権者の信頼の欠如だ。今回は立憲民主と公明党が選挙直前に新党「中道改革連合」を設立したが、この政党に対する理解が深まっていないのは確かだった。そうした中で野党勢力が候補者を統一できなかったこともある。
新党「中道改革連合」は167議席から49議席へと大きく後退した。自民党・維新の会の連立与党(352議席)に対して、野党全議員数を合わせても110議席だ。しかも連立が組めそうな政党は中道連合と国民党(28議席)の組み合わせの可能性があるぐらいだ。これでは野党対抗勢力とは言えない。
自民党は党自体とその政策への支持率とは無関係に高市人気で圧勝した。カリスマ的指導者への人民投票的な信任というポピュリズムに近い状況が実現した。無党派層の自民党支持率が今回は高かったこともその表れだ。
