2026年2月12日(木)

Wedge OPINION

2026年2月12日

問われる自民党の良識と国民の確たる政治参加意識

 今回の選挙の結果、高市首相は大きなフリーハンドを与えられたことになり、真の議論を経ずに数の力が独り歩きし始める懸念がある。議論なき政策決定の懸念は筆者ばかりであろうか。今後試されるのは自民党議員の良識と国民の強い意識だ。

 とりわけその政治の方向性について、今日の状況ではその不安は大きい。高市政権の外交感覚と防衛政策への懸念だ。

 それは、昨年11月、存立危機事態という用語を漠然と用いて「台湾有事」での自衛隊の積極的な関与を示唆し、日中関係が紛糾していることに示されている。歴代政権があいまいにしてきたことを明確に語ったことを評価する向きもあるが、何より米中が接近し始めた矢先にあの発言は時宜を心得た発言とは言えなかった(本誌拙稿参照 「世界の真ん中で咲き誇るという高市外交の真意、「存立危機事態」発言はなぜなされたか…「自主外交」「親米自立」の歴史的系譜のリアリズムを求めて」Wedge ONLINE)。

 防衛強化ではより具体的には、高市首相は防衛費の国内総生産(GDP)比2%前倒しを示唆し、防衛力の抜本的強化として、日本の安全保障政策の柱となる国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、そして中期防衛力整備計画といういわゆる3つの安保三文書(戦略文書)の改定に向けた議論を本格的に行いたいという意向を表明している。さらに日本が佐藤栄作政権以来国是としてきた「非核三原則」の見直しにも踏み込むことを示唆している。

 また、武器輸出制限の5類型(共同開発・完成品・部品・非攻撃装備・技術分野での移転や協力)についても、その枠を緩めることを掲げており、加えて原子力潜水艦導入の可能性の意思も示している。

 このような防衛力強化に強く傾斜することは、周辺諸国と世界に対する不安を大きくすることにも目を向ける必要がある。それが結果的に日本外交の「行動の自由」の足枷ともなりうることにも配慮すべきだ。仏「ルモンド」紙(2月10日版)の記事タイトルは「高市早苗支持のための人民投票」、そして「与党の勝利が首相の安全保障上のナショナリスト的性格の政治目標日程を加速化させることになる」とリードを打った。

デモクラシーの熟成と多数派形成の意味

 そこで問いたい。政党の支持率は低いが、代議制選挙で議席が確保できれば、その与党政府は信を得たということになるのか。間接選挙と政府への信頼の関係に対する問いだ。

 ポイントは真の意味での有権者の「政治参加意識」の育成度だ。イメージ優先だけで巧みに多数派を握る手法が自己目的化、常態化してはならない。

 この選挙は人気に乗じた多数派工作、しかも野党の非力の助長の結果の選挙だ。しかし同時に政治の活性化のための野党勢力を育てよう、与党のチェック機能を持つ対抗勢力を育てようという意識が我々にどこまであったのか。これも問われるところだ。

 筆者は従来デモクラシーとは与えられるものではなく、理想に向かった「挑戦」であると主張している。その姿勢は有権者一人ひとりの権利意識と高い有権者意識を不可欠とする。

 そのためのモティベーションの大きな一つは政権交代への期待だ。支持政党を超えて、政治を動かす、よくしていこうという素直な気持ちだ。国民の多くは今の政治に納得しているわけではないと思う。だからこそ消費税減税を各党は問題にした。しかしその政治を支えてきたのは自民党政権ではないのか。批判票の少なさに筆者は懸念を持った。

 政治全体の流れが大きく変化する期待感を真に意識することで人々は本気で議論しようとする。政治参加の教科書的説明だが、実は日本のデモクラシーに欠落する大きなポイントだ。


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