8日付の環球時報は社説で、日本は「中国の変化」を受け止めろ、というおなじみの論調を掲げた。
「日本は、中国における日本の対外的な位置づけを高く見積もってはいけない。中日友好は最も良いが、『非友好』も中国にとって受け入れられるものだ。われわれは、対日関係の緩和が中国の世界大戦略に有益だと知っているが、中日緊張が中国に与える損害は、日本人自らが認識するより深刻ではない」
「歴史」を「事実」に変える戦略
こうした安倍政権への強硬路線で注目すべきなのは、宣伝だけでなく、中国にとっての「歴史的証拠」を日本側に突き付けていることである。
日本人戦犯だけでなく、南京事件と従軍慰安婦の記録を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記録遺産に登録申請したが、これも中央档案館はじめ各地の档案館が収蔵する歴史資料が基になった。「南京大虐殺記念館」は犠牲者遺族の登録活動も始めた。
習近平自身も7日の演説で「歴史は最もすばらしい教科書であり、清醒剤(頭を覚ます薬)だ」「歴史はつまり歴史。事実はつまり事実だ」と述べ、「歴史事実は変えられない」として安倍政権をけん制した。
習が演説で反日キャンペーンを宣伝する一方、「档案」を突き付け、中国が主張する「歴史」が「事実」であることをさらに宣伝している。この宣伝戦略は国内・国際社会向けの双方で大きな効果があると、習指導部が見ているのは間違いない。
20年前と変わらない抗日キャンペーンの構図
中国共産党にとって抗日戦争に人民が団結して勝利した歴史は、党の正統性をアピールする根幹である。1982年の教科書問題をはじめ80年代になって突如として歴史問題での対日批判キャンペーンが始まったのはなぜか。当時、日本外務省で長く対中外交に携わった元高官はこう解説する。
「80年代に入って改革・開放政策が本格化し、西側諸国の価値観や情報、製品が入ってきたり、学生や学者らが海外に行ったりすると、中国の古い体制に対する批判が当然出てきた。そこで党の正統性を維持するため共産党の歴史についてきちんと教育する必要性が認識され、『愛国』を目的に日本に歴史問題を提起した。すると日本側が過敏に反応して『日本は意外に歴史問題に弱い』『使えるのでは』と感じたのではないか。『反日』は対日、国内の両方で利用できるが、特に反日感情が強い『国内向け』で強く打ち出すようになった」