ロステク総裁は輸出の困難をほのめかす
ロシアの武器輸出は国家特別輸出業者であるロスアバロンエクスポルト社がほぼ独占的に担当しており、同社は軍需産業を束ねる国家コーポレーション「ロステク」の傘下にある。そのため、ロシアの軍需製品の輸出の大部分は、ロステク系企業による製造と、同社子会社を通じた輸出という形で行われている。
ロステクを率いるのは、プーチン大統領とも親しいチェメゾフ総裁である。そのチェメゾフ総裁が、25年11月のインタビューで、ロシアの武器輸出の現状について語っているので、以下その模様を紹介する。
Q.現時点では、ロシアの国防産業は全面的に、国内需要を満たすことに向けられている。それに対し、世界の武器市場におけるロシアの地位については、どう評価しているか?
A.今日のような状況で、他国と張り合ったり、比べたりするのは愚かだ。西側は主としてウクライナへの供給によって輸出を拡大している。一方、ロシアはその兵器を破壊し、彼らによる供給の効果をゼロにするために取り組んでいるのだ。
「特別軍事作戦」が続いているわけで、最優先するのは自国軍である。しかし、輸出も忘れてはいない。我々には世界各地域に多くの友人や同志がいる。彼らはロシア製兵器を高く評価し、約束を守るパートナーとしての我々を信頼している。そのため、彼らは理解を示し、待ってくれている。今日、需要は非常に大きく、我々は軍事技術協力を継続しており、この市場での地位を失うつもりはない。
Q.ロシアは伝統的に世界第2位の武器輸出国だった。第1位になる可能性はあるか?
A.我々は現実主義者だ。競争は非常に激しく、ライバルも多く、彼らも決して手をこまねいていない。少なくとも今後10年間の戦略目標は第2位を維持することだ。そのための前提条件はすべて整っている。
我々は戦闘で実証された優れた兵器を製造している。受注残高は過去最高の600億ドル以上となっている。航空機、ヘリコプター、ドローン、防空システム、高精度弾薬など、様々な注文が入っている。
Q.ロシア製兵器の主な優位性は何か?
A.例えばウラル鉄道車両工場が製造する我々の戦車について言えば、特別軍事作戦の経験を踏まえ、ドローンや対戦車ミサイルに対する追加の全周防護を備えるようになった。米主力戦車の「エイブラムス」では、これからそれを導入しようとしているところで、我々のやり方を参考にしている。以前にはイスラエルもロシアのやり方を取り入れた。つまり、世界の戦車製造において、ロシアがトレンドを作っていると言える。
ロシアの製品は総じて、非常に高い性能を持ちながら、整備面でそれほど複雑でなく要求も厳しくない。同様に重要なのは、西側製よりも価格が高くないという点だ。
例えば、ロシアの装甲車両はしばしば、野戦の環境でも修理が可能である。T-90M「プロルィフ」が重大な被弾を受けながらも何度も戦列復帰した事例がある。その都度、戦闘可能な状態に戻すことができた。つまり、整備性の観点から見て、現代のロシア産戦車は伝説的なT-34の伝統を受け継いでいる。
これが、米国のエイブラムスではそうは行かず、工場の専門技術者が必要になるだろう。そもそも、あの重量の車両を戦場から引き出せるか。ロシアのプロルィフは大幅に軽く、走破性の面でも優れている。加えて優れた戦闘性能、先進的な電子機器と光学機器、誘導弾の発射能力などを考えれば、どちらに軍配が上がるかは自明だ。
Q.米国製多連装ロケット砲「ハイマース」が大々的に喧伝されていたが、ロシアの側から現実的な対抗手段は現れたのか?
A.この「奇跡の兵器」の登場は何も変えなかった。我々の「パンツィリ-S1」1基で、ハイマースの全弾斉射を撃ち落とすことが可能だ。特別軍事作戦の戦域で、実例も確認している。他方、ロシアの多連装ロケット砲「トルナードS」の誘導弾は、ウクライナ軍が西側製の防空システムを保有していても、迎撃は上手く行っていない。
以上がチェメゾフ総裁の発言振りであった。チェメゾフ氏は、受注残高が600億ドルと言っているだけで、年間の輸出額がどれだけであるかは言明していない。ただ、全体として、ロシア製兵器の競争力は強調しながらも、現時点ではウクライナでの軍事作戦を続ける自国軍への供給を最優先し、輸出取引をかなり犠牲にしていることをほのめかしている(そもそも、輸出契約が履行できていないから、結果的に受注残高が増えているのではないだろうか)。
チェメゾフ総裁の語り口は、「2025年に150億ドルの軍需製品輸出を行った」と胸を張ったプーチン大統領とは、だいぶ異なる。
