2026年3月3日(火)

インドから見た世界のリアル

2026年3月3日

 モディ政権の最初の外相はスワラージ氏。議会でイスラエルとの関係強化を担う責任者の女性だった。そして17年、モディ首相は、インドの首相として初めてイスラエルを訪問したのである。

 23年10月7日、ハマスがイスラエルに対する非常に残虐なテロ攻撃を行った時、アメリカよりも先に、世界で最初にイスラエル支持を発表したのは、モディ首相であった。その後、インドは、市民に死者が出ていることに懸念を示しつつも、BRICS会議の共同声明における1回だけを除き、インドはイスラエルを一切非難していない。国連でも、イスラエル非難に関しては棄権してきた。他の国の多くがイスラエル非難に回っても、インドの姿勢は揺るがなかったのである。

 このようにして、イスラエルからの一方的な「愛」で始まった両国の関係は、共通の敵であるイスラム過激派と戦う背景を持って、長期安定的な関係になっていったのである。

急速に地域大国化するイスラエル

 ただ、このような長期安定的な関係は、ここ数年の状況の変化で、さらに重要性を増している。23年10月7日のハマスによる非常に残虐なテロ攻撃以降、イスラエルは、多くのテロリストほぼすべてと戦ってきた。

 筆者が実際にイスラエルを訪問したのは24年11月のことであるが、この時も滞在先ホテルの近くにはミサイルが落下して死者が出て、バスで北部に行った時は、上空で迎撃されたヒズボラのロケット弾が爆発した。そのような中で、イスラエルは、イランが支援する武装組織、ハマス、ヒズボラ、フーシ派などすべてと戦い、そのすべての力を大幅に削いできた。

 ヒズボラの力をそいだ結果、シリアに新しい政権ができ、イスラエルに対して敵対的ではなくなった。そして、イランとも複数回交戦し、イランの軍事力を大幅に削いだ上で、26年2月、アメリカとともに大規模な空爆を実施し、イランの指導層と軍事力に決定的な打撃を与えている。このままいけば、イランは、イスラエルにとって脅威ではなくなるだろう。

 結果、起きることは、中東でのイスラエルの台頭である。20億人のイスラム教の国々に囲まれ、特にイランが支援する武装勢力からの継続的な攻撃にさらされる人口1000万人の小国だったイスラエルは、今や、軍事力と技術主導の地域大国へと変貌する可能性が現実味を帯び始めている。

 このような環境の下で、アメリカのトランプ政権は、イスラエルとサウジアラビアをはじめとするスンニ派のアラブ諸国の国交を正常化し、それをもとにして、インドから、イスラエルとサウジアラビアを含む中東を通過してヨーロッパへつながる大規模な経済構想インド―中東-欧州経済回廊(IMEC)を現実化しようとしている。

 さらに、アメリカは、半導体やAIなどの新技術のサプライチェーンでも、インド、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールに、日本、オーストラリア、シンガポール、韓国、イギリス、ギリシャ、オランダ、カナダ、欧州連合(EU)、台湾を含むパックス・シリカ構想を進めている。ここでも、インドとイスラエルとの協力が魅力的になっている。今、インドとイスラエルの協力は、伝統的な枠を超え、新しい段階に入り始めているのである。


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