日本語教育を担うベトナム人日本語教師の育成
11月10日。ハノイの中心部を散歩中に国際交流基金の建物があったので立ち寄った。昼休み時間であったが一階の図書室は日本語書籍が充実しておりハノイ中心部とは思えない静寂の中で5~6人のベトナムの若者が黙々と熱心に学習していた。
日本の本部から派遣された職員に話を聞くと国際交流基金では以前は直接ベトナムの若者に日本語を教える活動もしていたが、現在ではベトナム人の日本語教師のレベルアップを図るプログラムに特化しているとのことであった。57万人もの大量の労働者が日本で就業しているが、日本での就業のためには一定の日本語能力が求められる。そのためには優秀なベトナム人日本語教師の育成は喫緊の課題なのだろうと推測した。
ダナンの老舗日本語学校で聞く日本語学習者の激減
12月1日。ベトナム中部の大都市ダナンは有名なビーチリゾートであるが同時に近年は郊外の広大な工業団地に外国企業が多数進出して一大産業都市となっている。特に韓国企業の進出が顕著である。
老舗の日本語学校があると聞いたので市内見物の途中で立ち寄った。学校の敷地には日本庭園があり図書室兼自習室は畳敷きで床の間に掛け軸が飾られていた。職員室には数人の日本語教師がいた。ダナン在住7年というベテランの日本人女性講師Sさんに話を伺った。
当該日本語学校には日本人教師3人、ベトナム人教師6人が在籍しており、通学している生徒は120人程度。現在では日系企業の工場に出張してベトナム人従業員向けに授業することが中心業務とのこと。日系企業では幹部候補生のベトナム人従業員に対して日本語能力試験におけるN3合格を目標に設定しているようだ。
Sさんによると韓国への出稼ぎやダナンの韓国系企業での就業目的で韓国語学習者が増加しており、他方で日本語学習者は減少しているという。コロナ以前には当該老舗日本語学校には1000人以上通学しており最盛期には1200~1500人だったという。現在は最盛期より大よそ10分の1にまで減ったことになる。
日本語不人気の理由は円安進行と日本渡航前に払い込む多額の支度金
Sさんが出張授業に出かけた後でSさんの同僚の日本語教師であるアラフォーのベトナム人女性リョーさんと懇談。リョーさんもコロナ前の最盛期には1200人以上が通学していたと指摘。日本語学習希望者の減少によりダナンの日本語学校は大半が廃業して現在では数校しか残っていないという。
リョーさんは円安が日本語学習者激減の背景の一つであるが、日本渡航には多額の支度金が必要なことが大きな障害であると指摘。韓国ではこのような不透明な支度金が不要なので日本への出稼ぎはハードルが高いと日本の制度を批判した。
リョーさんが日本へ出かけた多くのベトナム人卒業生から聞いた限りでは支度金の返済には平均2年必要であるとのこと。食費も削って最低限の生活をすれば最短1年半で返済できると以前は言われていたが、ここ数年は円安により1年半では絶対不可能となっているという。従って最低3年日本に滞在しないと『元が取れない』とのこと。日本人のSさんが云い難い微妙な問題をリョーさんは率直に話してくれたことで筆者も問題の深刻さを理解できた。
次回(下)に続く
