日本食の哲学(だし・発酵・旬)
日本食は、だし、発酵、旬といった“時間をかけて育てる文化”で成り立っている。これは単なる料理技術ではなく、自然と共に生きる哲学である。
そして、この哲学は世界中で愛されるようになった。寿司、ラーメン、和牛、抹茶、だし文化。日本食は、世界の食卓に静かに浸透している。
しかし、その日本食を支えているのは日本だけではない。中国の冷凍野菜、ASEANの水産物、欧州の乳製品、米国の穀物により日本食は世界の恵みでできている。だからこそ、日本は世界と共に食を守る必要がある。
COFCO ― 国家の胃袋を守る巨大企業
中国には、国家の食料戦略を担うCOFCO(中糧集団)という巨大企業がある。売上10兆円、世界に10万人以上の人が働いている。
フォーチュン500に名を連ね、海外農地・港湾・サイロ・物流を一体で管理し、世界中の穀物を調達する“国家の胃袋”の実働部隊だ。世界中の農地・港湾を買収し、穀物メジャーと並ぶ調達力を持つ。米国産大豆の大量購入で米中関係を調整した実績もある。
日本ではほとんど知られていないが、しっかりとした食糧政策と実行部隊があるからこそ、中国は安定した食料供給力を持ち、日本企業が依存したのはある意味合理的だったといえる。
依存を減らすには「何年かかるのか」
では、依存を減らすべきなのか。答えは単純ではない。中国との協調は維持すべきであり、排外主義的な“脱中国”は現実的ではない。しかし、一国依存はどんな相手でもリスクになる。
だから必要なのは、脱中国ではなく、多層化である。真面目で優秀な中国人の力も借りながら、マレーシアやタイ、ベトナムなどASEAN圏に、日本の食料需給と中国の食料需給の双方に資するようなパートナーを平行して求めていくことも選択肢の一つだ。
問題は、産地転換や国内生産の再構築には時間がかかることである。
- 冷凍野菜:3〜5年
- 医薬品原薬:5〜10年
- 国内生産基盤:10年以上
つまり、依存を減らすには 「今から準備する」しかない。
多層化は防御ではなく、共創である
多層化は防御ではなく、世界との共創である。未来の子どもたちが、いま私たちが食べている味を、同じように楽しめる世界を残すために。
世界に誇る日本食を、これまで共に築いてきた中国の工場や冷凍技術、そしてこれからのAIや新しい加工技術と結びつけ、さらに進化させていく姿勢である。
そして何より大切なのは、静かに慌てないこと。しかし、世界の構造を広く見渡す洞察力だけは失わないこと。私たちはしばしば「国」と「国」を語るが、国境の向こうにも、私たちと同じように、家族を思い、花を愛し、日々の暮らしを大切にする“普通の人”がいる。
日本食は世界の恵みでできている。だからこそ、世界と共に守り、世界と共に育てる。そしてその過程で、日本自身もまた、世界と共に変わり続けることが求められる。これが、これからの日本が発信すべき“食の哲学”であり暮らしの知恵でもある。
