高層アパートメントホテルのロビーで妍(けん)を競うコリアン・マダム
ハン川東岸のソンハン橋から上流に2キロ弱の間には、新しい高層マンションやホテルが並んでいる。ひときわ目立つ「●●●●リバー・フロント」という高層アパートメントホテルの平日の昼下がりの車寄せでは、大型ハイヤーからテニス帰りのコリアン・マダム4人が降りて来た。お洒落なテニスウェアに身を包み韓国的お化粧をしており、韓流ドラマのハイソ・マダムのようである。次のSUVタイプのハイヤーからは、ゴルフウェア姿のコリアン・マダムたちが下りて来た。ドアボーイが駆けつけて車からゴルフバッグを下ろしてカートに乗せて運ぶ。
ロビーを覗いてみると、着飾ったコリアン・マダムが三々五々とグループをつくりおしゃべりに興じていた。まさしく韓流ドラマが描く世界であった。
高級アパートメントホテルの韓国人家族は長期滞在者
「●●●●リバー・フロント」のコンシェルジュ・サービスで話を聞いたら、アパートメントの韓国人居住者は大半が家族帯同で赴任してきた韓国企業の駐在員らしい。やはりアパートメントの住人では、韓国人が最大多数で30家族という。ちなみに日本人は単身赴任の年配男性が2人だけ。
欧米人の駐在員の賃貸契約期間は数年が普通であるが、韓国人駐在員の場合は一般的に5年またはそれ以上らしい。韓国企業では、会社から現地に骨を埋める覚悟で海外赴任することが求められると筆者は聞いたことがある。長期間現地で頑張り、大きな成果を挙げて本社に凱旋することで、将来の出世が約束されるという企業風土があるようだ。
ベトナムへの累積直接投資金額でも韓国がトップ
ネット情報では2025年1月の時点でベトナムに進出している韓国企業は9000社超であり、ベトナム在留韓国人は20万人という。ちなみに在留日本人は2万人以下というから、いかに韓国人が多いか想像できる。
2024年11月末時点でのベトナム向け累計直接投資額では韓国が891の億ドルで第1位となっている。第2位はシンガポールで823億ドルであるが、シンガポールの累計投資額が大きいのは、グローバル企業がシンガポール拠点経由でベトナムに投資しているという背景がある。シンガポールの後に日本、台湾、中国・香港が次いでいる。
ハノイだけでも6~7万人の韓国人が在住しているというが、ダナン在住韓国人も同様の規模ではないだろうか。ダナン近郊には大規模な工業団地が広がり近年サムスン、LGなど韓国の錚々たる大企業が続々進出している。
ベトナム戦争中の韓国軍の戦争犯罪と“韓国兵の落し子”(ライダイハン)
韓国では朴槿恵及び文寅民大統領時代に、旧日本軍の“慰安婦問題”が日本でも連日大きく報道されていた。そうした時期に韓国でも朝鮮戦争時に米軍将兵のために韓国政府が慰安所を設置したことを、一部日本メディアが報じていた。さらに日本の活字メディアでベトナム戦争に派遣された韓国軍兵士が、南ベトナムの女性を性暴力により人権蹂躙したことも小さく報じられた。
いくつかの情報を総合すると、韓国軍兵士の性暴力で妊娠して生まれた韓国兵の落し子は、最低5000人から数万人と推定されるとのこと。2017年英国のインディペンデント紙は、13~14歳の少女を含む数千人のベトナム女性への強姦、性的暴力によりライダイハンが生まれたこと、そして成人したライダイハン本人や被害者女性の体験談を掲載した。2020年3月、BBCは韓国兵のベトナム戦争中の所業を特集して、ライダイハン問題や1968年クァンナム省での韓国軍による村民虐殺事件を報道した。
さらに韓国兵による性暴力被害者のベトナム人女性が、韓国政府を相手に損害賠償の訴えを起こし、2023年2月ソウル地裁はベトナム人女性への3100万ウオン(当時のレートで約314万円)の賠償支払いを命じる判決を下した。しかし、韓国政府は判決を認めず即日上告し、韓国陸軍は事実無根と声明を発表した。
ベトナムでは誰も知らない韓国軍兵士の性暴力とライダイハン問題
筆者は、ベトナムでもライダイハン問題は憎むべき犯罪として、広く国民に共有されていると想像していた。ところが、案に相違してフツウの人々には全く知られていないことに愕然とした。
ベトナム語でライは混血児、ダイハンは大韓を意味する。筆者はベトナム語でライダイハンと書いて社会問題に関心のありそうなベトナム人に質問してみたが、誰も知らなかった。これだけ韓国の存在感(presence)が大きい現代ベトナムで、最大数万人の韓国兵の混血児が存在しているのに、どうして社会問題にならないのだろうか。大きな疑問が浮かんだ。
以上 次回(下)に続く
