一人勝ちのない時代に必要な「エコシステム型リーダー」
人口減少、高齢化、地方衰退。日本は世界に先駆けて「課題先進国」となった。市場が縮小し、単独企業が成長し続けるモデルは成立しない。特に医療・介護、交通、教育、地域インフラといった領域では、複数の企業、行政、NPO、地域住民が協働しなければ価値が生まれない。一人勝ちは存在しない。エコシステムが前提である。
この環境で求められるのは、従来の「グローバル人材」でも、フラスコの中でビジネスモデルを実験する“スタートアップ的リーダー”でもない。必要なのは、制約を前提に、異なる主体をつなぎ、社会の持続性をつくる「エコシステム型リーダー」である。
このリーダーに求められるのは、次のような力だ。
- 社会や市場の制約を前提に最適解をつくる力 = 人口減少・財政制約・高齢化を“前提条件”として扱い、そこからバックキャスティングして事業を設計する。
- 公共市場を理解し、民間の論理と接続する力 = 行政の意思決定プロセス、制度、財源、住民感情を理解し、民間のスピードと統合する。 単なるSDGsや社会貢献事業ではない、視野を拡大して越境する。
- 異業種を束ね、共通目的をつくる力 = 利害が異なる主体をまとめ、エコシステムとして機能させる。
- 現場の複雑性を扱い、実装まで落とす力 = 机上のビジネスモデルではなく、現場の制約を踏まえた“実装力”を持つ。
私が過去に経験した二つの事例は、このリーダー像を象徴している。
①東北の植物工場による高栄養レタス栽培ノウハウを、母体企業が事業から撤退する際に機内食提供会社へ橋渡ししたケース。
②シャープの高齢者見守り技術を、事業撤退にあたりNTT西日本へ引き継がせたケース。
どちらも、儲からなくても意味がある取り組みだった。地域の雇用、技術の継承、高齢者の安全、家族の安心。こうした価値は、市場原理だけでは守れない。しかし、自身の関係するような地域消滅都市を減らすことは、国家全体の税負担を軽くする。小さな取り組みが、国家レベルの財政健全化につながる。
国内MBAが育てるべきは、まさにこの「つなぐ力」を持つリーダーである。日本語で議論し、日本の制度・文化・市場を前提に学び、異業種の実務者とともに現場の複雑性を扱う。これは海外MBAにはない、日本独自の進化形だ。
企業国家が終焉し、個人が自律し、社会をつなぎ直す時代。国内MBAは、そのための“新しい学びのインフラ”として、静かに存在感を高めている。

