2026年4月15日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年4月15日

 イランの非対称的な優位性は、最も狭い地点でわずか約48キロメートル(km)しかないホルムズ海峡で特に顕著である。イラン政権は、機雷、ミサイル、ドローンを用いて、この海峡を封鎖している。

 イランがホルムズ海峡を封鎖する能力を維持すれば、米国にとって屈辱的な敗北となる。この脅威を終わらせる唯一の方法は、外交交渉か、イラン沿岸に多数の部隊を派遣して占領することである。

 米軍は世界最高峰の軍隊であるものの、米国の政治指導力には多くの問題点がある。歴代米大統領は軍に達成不可能な任務を与え続けてきた。最も悪名高いのは、イラクとアフガニスタンを民主主義国家に変えるという任務である。そして今、軍は空爆によって政権交代を実現するという、ほぼ不可能な目標を与えられている。

 戦争で露呈した米軍の弱点の多くは、より賢明な調達によって克服できる。しかし、無能な政治指導者たちが、希望的観測に基づく不必要な「遠征」によって、圧倒的な軍事的優位性を無謀にも浪費するという問題には、容易な解決策はない。

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アフガニスタン、イラク以上の泥沼の危険性

 2001年から21年まで20年間つづいたアフガニスタン戦争、03年から11年まで8年間続いたイラク戦争――これらがなぜ失敗したのかについて多くの報告や論説が公表されているが、その中で共通する重要な指摘の一つは、軍事的・戦術的成功を政治的・戦略的成功に転化することができなかったこと、つまり戦場における軍事目的の達成を平和と秩序の構築に結びつけることができなかったことだ。そして今、米国は同じ轍を踏もうとしている。これが本論説でブートが最も言いたいことであり、多くの識者も同様の懸念を共有していることだろう。

 今次イラン攻撃においては現時点で地上軍を派遣しておらず、攻撃からすでに1カ月以上経過して指導部の多くが排除されても、イランの体制そのものの崩壊には至っていない。これは現時点でなお地上軍派遣に至っていないこともさることながら、アフガニスタンやイラクと異なり、イランの場合は国家としての一体性が強固で、しかも政府、宗教指導部、治安・軍事組織が並列的に存在する権力構造で、一部を排除しても別の権力中枢が代替するという強靭な体制になっていることも大きい。仮に地上軍を派遣しても、体制崩壊はアフガニスタンやイラクのようには行かないだろう。

 しかも、中東全域におけるイランの政治・経済・軍事的位置づけの大きさを考えれば、イランの体制を崩壊させて権力の空白状態を作ることの影響は、これまでにないほど大きく、その再建に至っては、はるかに複雑かつ長期にわたるものとなるだろう。そのことがもたらす、米国のみならず国際社会全体に与える損失の大きさを考えれば、体制が維持されていることは決して悪いことではない。

 地上軍を派遣してイランの体制崩壊に至らしめる場合には、アフガニスタンやイラクと同等ないしそれ以上の泥沼に陥る危険性がある。米国は表向き派手な言辞を弄しつつも、実質的にはイランとの間で交渉による解決を図り、早期に勝利宣言をして軍を撤退させるべきだ。


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