2026年4月20日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年4月20日

 ロシアがイランに対し、同地域における米国資産への攻撃のための標的データを提供したとの報道がある。事実ならば、モスクワによるイラン軍事力への重要かつ具体的な貢献だが過大評価すべきではない。ロシアが、米国にウクライナへの標的データ提供を停止させるための取引に使おうとしているだけかもしれない。

 プーチンの現在の戦略は、中東戦争を不安げに見守り、米国が何らかの泥沼にはまり込むことを期待することだ。泥沼化のメリットは明白である。

 「エピック・フューリー作戦」の失敗は、トランプに屈辱を与えるだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)および米国の地域同盟に緊張をもたらし、原油価格を高水準に維持するだろう。紛争が長引けば長引くほど、クレムリンの財政にとっては好都合だ。

 イランの軍事力を著しく低下させた後、米国がイラン政権と妥協点を見出したならば、中東における米国の地位は飛躍的に向上するだろう。これに対し、ロシアと中国は、新世界秩序について語ることしかできない、張り子の虎であることが露呈するだろう。

 たとえ弱体化したイラン政権が存続したとしても、米国の勝利と合理的に解釈できる形で終結する短期戦争であれば、米国の信頼性は強化され、ロシアの信頼性はさらに低下するだろう。ロシアがウクライナで行っている「特別軍事作戦」の苦戦ぶりとは全く対照的となる。ロシアの作戦は、数十万人の命を奪ったにもかかわらず、当初の目的を一つも達成できていない。

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油価の高騰はロシアを助けるか?

 上記の論説の内容にはほとんど全面的に賛同できる。そのうえで、幾つか補足しておきたいことがある。

 第一に、今次イラン攻撃は違法かつ甘い見通しによる武力行使である点においてロシアのウクライナ侵攻と類似性があるものの、その目的と態様において大きく異なっており、如何に米国の行為が非難されようと、ロシアの行為に対する評価とウクライナ支援の根拠は何ら変わるものではないということである。

 ロシアは、同国に何ら危害を加えていないウクライナに対し、その国家性をも否定して武力によって自国の勢力圏に組入れようとしたもので、国際秩序がよって立つ基礎を破壊する行為であった。さらに、非戦闘員への容赦ない攻撃や子供の誘拐など手段を選ばない行為は、深刻な人道問題を生ぜしめている。

 これに対し米国が攻撃対象としたイランは、核開発疑惑、ミサイル開発、ハマス、ヒズボラなど代理勢力を使ったテロ活動、デモ参加者等の自国民に対する大規模迫害等々、国際社会に対するいくつもの不安定要因を抱えていた。だからといって、米国による軍事行動が国際法上正当化される訳ではないが、ロシアがウクライナという主権国家の「存在」そのものを否定しているのに対し、米国はイランの「行動」を変えようとした点が大きく異なる。


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