第二に、原油価格の動向はロシアの継戦能力に大きく影響する要素であり、本件記事では詳述されていないが、油価の高騰がロシアに与える恩恵がどの程度のものかについて、おおよその見通しは持っておく必要がある。
ロシア財務省は、本年度予算におけるウラル原油の基準価格を1バレル59ドルに設定しているが、イラン戦争により3月末の段階で油価は約1バレル115ドルまで上昇しており、55ドル程度の超過となる。これは確かに恩恵には違いないが、問題は油価の高騰から得られる利益とロシアの財政赤字との相関関係である。
まずロシアとしては高値のうちに大量に輸出したいところであるが、制裁が一部一時的に解除されたとは言え、「闇の船団」に対する規制を含め対露制裁そのものは維持されており、輸出量はかつての日量約450万バレルから3月時点では175万バレルまで下落している。油価が基準価格を55ドル上回る状態で日量175万バレルの輸出を継続すると仮定した場合、1カ月の追加的財政収入は最大でおよそ14~15億ドル程度となる。
これに対し、ロシアはすでに1~2月だけで昨年1年分とほとんど変わらない5.57兆ルーブル(連邦財務総局推計)の赤字を計上している。1ドル80ルーブルで計算すると約696億ドルとなり、この2カ月の赤字を埋めるだけでも、上記の追加的財政収入では全く追いつかない。
ただし、対露制裁がさらに解除されて輸出量が大きく増加し、かつその状態が長期にわたれば状況は変わってくる。対露制裁の維持とイラン戦争の早期終結が求められる所以である。
米国は戦争を終わらせられるか
最後に、結局のところ最大の問題は、イラン戦争を短期で終わらせることができるかどうかにある。精々1~2カ月で、何らかの形で米国が「勝利」したと「合理的に」説明可能なところで戦争を終わらせることができれば、米国に対する信頼性の大幅な低下は避けられ、ロシアの継戦能力が大きく向上することもなく、かつロシアの国際社会における地位は一層低下するだろう。
米国としてはとにかく戦争の早期終結に向けて、一定の成果が得られたところで妥協し、何としても長期化を避けることが最重要課題である。
