2026年5月7日(木)

Wedge REPORT

2026年5月7日

 来日した留学生の多くはまず日本語学校に入学する。その日本語学校に対し以前から入管庁は、留学生の在籍管理が適正とみなす場合に「適正校」と認定し、留学ビザの発給を優遇してきた。そして最近になって「適正校」を2ランクに分け、とりわけ優良とみなす「クラスⅠ」の学校への入学を希望する外国人に対し、ビザ申請時に必要な書類を減らしたのだという。入管庁在留管理支援部在留管理課も取材に対し、ランク分けを「令和4年(22年)の選定から、適正校のうち特に在籍管理が適正に行われている教育機関について提出書類を更に緩和するものとして導入した」と認めた。

 「緩和」によって免除されたのが、アジア新興国の留学希望者に提出を義務づける「経費支弁関係」の証明書だ。留学ビザは日本でのアルバイトなしに学費や生活費をまかなえる経済力のある外国人に限って発給される。その経済力の立証のため、入管当局は新興国の留学希望者に親の年収や預金残高の証明書の提出を求める。しかし「クラスⅠ」の学校への留学の場合は不要となった。

 筆者の取材経験から、アジア新興国の留学生に経費支弁能力を有する者が少ないことは断言できる。そのため多くの留学希望者がビザ取得に十分な経済力があるように装う。現地の送り出し業者経由で行政や金融機関の担当者に賄賂を支払い、実際よりも金額が大きく水増しされた年収や預金残高の証明書を作成するのだ。書類は行政機関などが発行した本物だが、数字は偽っている。

 そんな実態が放置されたまま留学生は増加してきた。経費支弁能力の有無を問題にすれば、留学生が増えなくなるからだ。入管庁の「緩和」措置は、そんな現状の追認に等しい。

不自然な年収と職業……
仕事を求める留学生たち

 「クラスⅠ」以外の学校への留学希望者には、従来通り経費支弁関係の証明書の提出が求められる。

 また、「クラスⅠ」への入学であっても学校には書類を提出するが、多くの学校は書類に不自然さがあろうと入学を認める。留学生が増えればそれだけ儲かるからだ。

 筆者の手元に2人のネパール人留学生、Sさん(女性、19歳)とKさん(女性、21歳)がビザ取得に用いた書類一式がある(次頁参照)。経費支弁関係の書類には、行政機関が発行した親の年収証明、金融機関の預金残高証明があり、どちらもレターヘッド入りの用紙に担当者が署名している。一見すると本物だ。

 「紙もサインも本物ですよ。ただ、年収や預金残高の数字が普通に考えておかしいのです」

 そう話すのは、書類を提供してくれた日本人ブローカーだ。この日本人ブローカーは、ネパールなどから年に数十人の留学生を日本国内の日本語学校に斡旋している。

 書類に記されたSさんの親の年収は「226万5010ルピー」(約238万円)、Kさんの方は「223万8915ルピー」(約235万円)だ。25年のネパールの1人あたり国内総生産(GDP)は1496ドル(約24万円)と日本の20分の1に満たない。しかも2人の親はネパールでも貧しいとされる「農家」だ。

 預金残高はSさんの親が約226万ルピー、Kさんが約266万ルピーとこちらも額が近い。日本での生活を支えるための仕送りは「月7万円」と同額だ。これは偶然なのか?

 日本人ブローカーが言う。

 「2人に限らず、ネパール人留学生の書類にある(親の年収などの)金額はほぼ一緒。日本の留学ビザが取れる金額に〝調整〟してある。私の知る限り、仕送りのある留学生などいません。逆に日本で働き、親に仕送りしようとしているんですから」

 日本人ブローカーによれば、ネパール人留学生の親の職業が決まって「農業」なのにも理由があるという。


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