「ネパールなどでは農業所得は非課税です。入管が年収の金額を疑い、納税証明書の提出を求めても『税金は払っていない』と言い訳できるよう皆、職業を『農業』にするのです」
日本人ブローカーが斡旋したネパール人留学生の中には、国会議員の子弟が親の仕事を「農業」と偽るケースもあった。ネパールの国会議員の収入は少なく、留学ビザの発給基準に足りないため、偽ったという。
「ネパールにも富裕層はいます。しかし、わざわざ日本に留学する若者は珍しい。私が仲介する留学生の書類はほとんど改ざんされています」
日本人ブローカーはそう話し、さらに続けた。
「クラスⅠの学校が〝優良校〟とは限りません。学校から逃げて不法残留となった留学生でも、事前に除籍していたことにすれば責任は問われない。正直に入管に報告している学校が損をするケースもあるのです」
こうした不自然な書類を問題にせずビザを発給し続けた結果、日本に押し寄せたのが勉強よりも出稼ぎが目的の〝偽装留学生〟だ。彼らは留学生に週28時間以内のアルバイトが認められることに着目し、留学を出稼ぎに利用する。日本語学校の初年度分の学費、送り出し業者に支払う手数料で150万円前後を借金に頼って来日するのだ。ただし、週28時間のアルバイトでは借金の返済や翌年分の学費の支払いは難しい。そこで彼らは法定上限を超えて働く。バイト先は弁当や総菜の製造工場、宅配便の仕分け現場などだ。特に夜勤は人手不足が深刻で、語学力を問われず仕事に就ける。
入管当局は留学生の違法就労への監視を強めている。ビザ更新時に発覚すれば、母国に帰国するしかなくなる。しかし、バイト代が銀行振り込みではなく現金支給されれば、当局に違法就労を把握されない。そんなバイトは友人やSNSを頼れば簡単に見つかる。
留学生に経営や人手を依存
放置されている日本の課題
それにしても、なぜそこまでして政府は留学生を増やしたいのか。
留学生が急増して最も恩恵を受けているのは教育業界だ。入管庁によれば、日本語学校の数は26年2月時点で846校に上る。「留学生30万人計画」が策定される前年の07年から3倍弱、コロナ禍前と比べても100校以上増え、まさに〝バブル状態〟だ。日本人の学生が集まらず、留学生に経営を依存する専門学校や大学も少なくない。
政府には「外国人労働者の数確保」への危機感もあるのだろう。高市政権が設定した28年までの外国人労働者の受け入れ上限は特定技能80万人、育成就労43万人の計123万人だ。特定技能は現在より40万人以上増やせるが、数の確保はそう簡単ではない。日本の賃金は韓国など他国に追い抜かれ、出稼ぎ先としての魅力低下が著しいからだ。
特定技能の4割以上は技能実習からの移行組だが、実習生数の増加は25年にほぼ止まった。育成就労に名称が変わっても大きな増加は見込めない。そこで政府は留学生を特定技能への供給源にして、外国人労働者の数確保を目論んでいるのかもしれない。

