国家資格と品質
疑問の第1は、家事支援サービスの国家資格を作ることによって、本当にサービスの質が上がるのだろうかということだ。
家事支援サービス(掃除や料理などの)であれば、その成果は容易に判断できる。サービスが気に入らなければ、次回から人あるいはサービス会社を替えるだろう。
これで十分に品質はチェックできる。サービス会社は、断られないように、社員の研修を行うだろう。
一方、育児、介護であれば、利用者の見えないところで行われ、その間、虐待などがないかが一番の心配になる。もちろん、1歳児未満にはちみつや黒糖などを与えてはいけない等の知識は必要だが、これも短時間の講習ですむだろう(親が与えて良い食べ物を用意しておくのが普通だろう)。
大学での教育や国家試験を経て採用される保育園教諭や学校教員でも、虐待を避けることはできない。国家資格を難関資格に近いものにしてしまえば、むしろ家事サービス供給を減らすことになってしまう。室内にカメラを設置することが解決策かもしれない。
ニューヨーク市では、配達員は自分が使用しているフード配達サービス(ウーバーなど)のロゴが入ったベストを着用し、専用の写真付きIDカードを携帯することが義務付けられている。これは、危険走行の取り締まりや、配達員が不法就労者を含む他人に仕事を頼むことを防止するためである。同時に、最低賃金を大幅に引き上げたが、その結果、チップと注文が激減し、総収入は減ったという(”Delivery Drivers Got Higher Wages. Now They’re Getting Fewer Orders,” Wall Street Journal, June 22, 2024)。
当然、ウーバーに頼っていた忙しい人々の労働時間も減っただろう。日本の家事サービスも、そうならないように気を付ける必要がある。
経済支援は所得控除で
第2は、経済支援をどうするのかの曖昧さである。資料を読む限り、国家資格保有者を利用した時のみ税制措置が得られると解釈できる。
つまり、国家資格を保有する利点は、利用者が必要経費として控除できるかどうかで、家事サービスの質とは関係ないものになるだろう。これでは、国家資格を運営する役所の利益にしかならない。役所は忙しくて人が足りないと言っているのに、こんな仕事を増やすことはない。資格運営のために税金を使うことにもなる。
