2026年5月1日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2026年5月1日

 そもそも解決の方向が間違っている。目的は育児や介護による離職者を減らすことだ。育児や介護の支援サービスがあれば、離職者を減らすことができる。保育園や介護サービスはそのためでもあり、すでに支援はされている。さらにとなれば子供が病気の時の保育、一般の家事に広げることが必要になるということのはずだ。

 育児、介護、病気の子どもの世話なら、その一部を税金や社会保険料で賄うことに世論は賛同するだろうが、家事まではなかなか賛同しにくいだろう。しかし、育児、介護、病気の子どもの世話、家事などのすべてのサービス(以下、単に家事等サービスという)があれば働けるという人も多いだろう。

 その時、どうしたらより多くの人に働いてもらえるだろうか。解決策は国家資格ではない。働くための家事等サービスの費用を所得から控除できるようにすることではないだろうか。実際、アメリカではそうなっている。

 つまり、家事等サービスの費用は、働いて所得を得るための費用である。所得から費用を除いたものが真の所得であることは自明の理である。

 家事等サービスの価値は誰にとっても同じである。どういう人が利用するかと言えば、所得の高い人が利用するだろう。それは不公平だという議論があるかもしれないが、所得の高い人が働くことによってより税収が増加する。

 前に、子どもを預かる費用は高額なので、所得の高い家族からはコストに近い料金を取り、パートタイムの仕事であれば乳幼児期間は家族が世話をし、その後、手間がかからず保育コストが低減してから保育所に預けた方が良いのではないかと書いたことがある(原田泰『人口減少の経済学』97頁~103頁、PHP研究所、2001年)。反論はなかったので、今回もないことを期待している。かつて書いたことと同じ理屈である。

 もちろん、金持ちが過大な家事サービス、あるいは高品質な家事サービス(シェフに料理を作らせる、英語、音楽、ダンス教師に育児をさせる等)を禁じ、あくまでも働くことを可能にするために必要な限りでの家事等サービスでなければならない。それは、サービス単価の制限、サービス時間の上限を設けることで簡単にできるだろう。国家資格などは要らない。

有識者も求めてはいない

 「分野横断的課題への対応の方向性」の資料には、日本成長戦略会議有識者構成員12人のうち7人が意見を提出していたが、「家事等の負担軽減」に言及しているのは2人しかいなかった。内容は家事支援サービスの利用促進を求めるものではあるが、国家資格ではない。

 成長戦略には、本来の目的を離れた奇策、拙策、失策が多々紛れ込んでいるのではないか。

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