しかし、今年に入り、有権者の最大関心事が「経済」問題に移り始め、特に、対イラン戦争以来、圧倒的多数の有権者が「インフレ」「物価」「生活費」を最重要視していることが今回調査に現れており、支持率の逆転はトランプ政権にとって“黄色信号”だ。
実は民主党政権の方が残している実績
もともと、民主、共和政権下の過去の経済実績を振り返ると、伝統的に、民主党政権の時の方が雇用、経済成長、株価などの面で一貫して成果を挙げ、逆に、歴代共和党政権下では、景気後退、低迷が続いてきた経緯がある。
この点、近年の好例として挙げられるのが、オバマ民主党政権(09~17年)とトランプ共和党1期政権(17~21年)当時の経済状況比較だ。
まず、1期目のオバマ政権は、前任のジョージ・W・ブッシュ共和党政権下で「リーマン・ショック」に端を発する未曽有の経済危機により、国内総生産(GDP)が8.4%も下落、180万人以上の失業者を出す悲惨な状況を引き継ぐ形でスタートした。
一刻の猶予も許さない経済再建へのオバマ氏の手腕は、それまで未知数だったが、就任後、直ちに経済ブレーン、議会指導者との精力的協議を重ね、①スピーディな景気刺激策②困窮企業に対する思い切った救済措置③貿易促進などを柱とする大胆な積極経済財政政策を打ち出した。
その結果、経済低迷にも歯止めがかかり始め、10%近かった失業率も1期目終わりまでに、当時としては10年ぶりの4.7%にまで大幅に改善した。そして同政権末期には3.5%と、ほぼ平年並みとなった。
この間、雇用も76カ月連続して拡大し続けた。また、オバマ政権2期目の後半2年間には、さらに一人当たり国民平均所得も4800ドル増を記録している。
一方、後継のトランプ1次政権は、オバマ前政権以来の経済回復基調の恩恵にあずかり、当初は順調なスタートを切ったかに見えた。雇用も拡大を続けた。
ところが、政権後半の20年初頭から新型コロナウイルス感染が全米に拡大し始め、とくに当初から事態を軽視してきたトランプ大統領の失政や、関係省庁による対策が後手に回ったことなどで、深刻な医療、経済危機を招いた。
結局、21年1月にバイデン民主党大統領にバトンタッチするまでのトランプ政権の経済実績を振り返ると、①雇用が過去歴代政権と比較して最悪となる50%減を記録②失業率が前政権時と比較して10%増の14.7%まで拡大③株価も低迷が続き、20年10月にはS&P株価は一時34%も下落した(オバマ政権下では平均75%上昇)④財政赤字も就任当初の対GDP比76%から20年半ばまでに105%にまで拡大⑤戦後、年平均2~3%のペースで拡大し続けてきたGDPは逆にマイナスに転じたなど、具体的数字が示す通り、惨憺たる結果となった。
もちろん、上記のようなトランプ政権時の経済低迷の背景として、「コロナ要因」を無視することはできない。しかし、ワシントンの経済専門家たちの間では①コロナ危機に見舞われる前の19年までの3年間だけに限ってみても、雇用拡大にブレーキがかかり始めるなど、オバマ政権時と比較して成果は見劣りした②そもそも、コロナ危機により最悪の経済状況を招いた大半の責任は発生時から対策を軽視してきたトランプ大統領にある――との見方が少なくない。
同様に、トランプ政権下で悪化した経済状況を引き継いだバイデン政権の場合も、コロナ危機がほぼ終息した21年末までに、それまでマイナス3.4%だったGDPを逆にプラス5.7%に押し上げるなど、閉塞したムードを一変させた。雇用も、就任11カ月で650万増を記録、失業率は逆に, トランプ政権時の14.7%から3.9%にまで減少させた。中小規模の新規起業は、21年だけで539万件にも達した。
